[Flight Operations : 運航]
パイロット免許への水先案内人
須永です!
前回は、
Entering the Traffic Pattern について
お話しさせていただきました。
コントロールタワーのない空港の
トラフィック・パターンに入るために
基本的な手順に則った方法で
行うことの大切さを
理解していただけましたか?
今回は、
Land And Hold Short Operations
についてお話したいと思います。
Land
And
Hold
Short
Operations
上記を略して LAHSO (ラーソ) と呼ばれているものです。
交差ランウェイがあるような大きな空港で
着陸に向かって進入している航空機に対して
出される着陸許可のひとつです。
混雑してきた交通量をさばくための
措置として考えてください。
例えば、
あなたにランウェイ27への
着陸許可が出されたとします。
その許可 (クリアランス) は
LAHSO です。
” Cessna 123, ○○ Tower, Cleared to land Runway 27, Hold short of Runway 23 “
「ランウェイ27への着陸は許可しますが、ランウェイ23までには停止してください」
という意味になります。
なぜなら、ランウェイ23にも
最終進入して来る航空機があるためです。
その航空機はランウェイの全長使用を
許されている状況です。
このように
交差する2本のランウェイを
同時に上手く使用して
空港全体の機能の容量を
増やす目的で行われる手順ということですね。
では、次にロングビーチ空港の
Airport Diagram を見てほしいのですが、
同じように以下の通りクリアランスを
受けたとします。
” Cessna 123, Long Beach Tower, Cleared to land Runway 30, Hold short of Runway 25R “
ランウェイ30に着陸したとして
そのままランウェイ上を進んでいくと
ランウェイ25Rの手前に
破線と略称の LAHSO の文字が
見えますか?
この破線の所が
LAHSO ポイントということですよ。
この LAHSO ポイントの先に
ランウェイ07L-25R があるということですね。
ランウェイ30への
LAHSO クリアランスを受けたあなたは
LAHSO ポイントまでに停止しなければいけません。
なぜなら、管制官は
ランウェイ25R へ
着陸して来る航空機、
又はランウェイ25R からの離陸滑走を
始めた航空機も同時に
コントロールしているためですね。
このように LAHSO が行われる背景には
地上の移動の遅れを減らす目的があるんです。
LAHSO
Reduce ground delays
LAHSO
:ランド・アンド・ホールド・ショート・オペレーションズ
Reduce ground delays
:減らす 地上の 遅れ
さて、
この LAHSO クリアランスを
受け入れることも辞退することも
その権限というのは
実は、機長にあるんですよ。
PIC
Authority to accept or decline a
LAHSO clearance
PIC
:機長(パイロット・イン・コマンド)
Authority to accept or decline a
:権限 受け入れること 又は 辞退すること
LAHSO clearance
:ラーソ・クリアランス
もし、機長であるあなたが
LAHSO クリアランスを断った方が
安全だと思うのであれば辞退してください。
このクリアランスは強制的な義務ではありません。
機長のあなた次第です。
DECLINE LAHSO CLEARANCE
If believe safety will be compromised
DECLINE LAHSO CLEARANCE
:辞退しなさい ラーソ・クリアランス
If believe safety will be compromised
:もし 信じるなら 安全が 危うくなると
もう一つ覚えておいてほしいことは
LAHSO クリアランスを受け入れた後でも
機長のあなたの判断で
必要があると認められる状況では
Go around (着陸やり直しのために再び上昇開始すること)
することもできるのです。
PIC
Can still reject landing
PIC
:機長(パイロット・イン・コマンド)
Can still reject landing
:まだ拒否できる 着陸を
以上のように
LAHSO クリアランスを
受ける受けないは全て機長の判断
ということです。
では、LAHSO クリアランスを
受け入れてはいけない人がいるのですが、
誰だか分かりますか?
それはですね・・・
もし、あなたが訓練生パイロットの場合は
LAHSO クリアランスを絶対に
受け入れてはいけません。
STUDENT PILOTS
Must decline LAHSO clearance
STUDENT PILOTS
:訓練生パイロット
Must decline LAHSO clearance
:辞退しなければならない ラーソ・クリアランス
また、
たとえライセンス保持者であっても
その空港にまだ慣れていなかったり
LAHSO クリアランスの経験値が
浅いのであるなら、
辞退すべきだと思います。
とにかく安全第一です。
ところで、
飛行計画を立てる際、
目的地の空港が
LAHSO の手順を採用しているのかどうかを
事前に確認しておきましょう。
もし行われているのであれば
知っておくべきことがありますよ。
それは、
各 LAHSO ランウェイにおいて
使用可能な着陸距離です。
ランウェイ上の
どれくらいの長さを使えるかということです。
そのデータによって
安全に着陸停止できるかどうかを
事前に知ることができますよね。
PLANNING A FLIGHT
Check destination airport
for LAHSO procedures
PLANNING A FLIGHT
:飛行計画
Check destination airport
:確認する 目的地空港
for LAHSO procedures
:ラーソ手順のため
では、それらのデータは
どこで探すことができるのかというと
Chart Supplement です。
Regulations にも
AIM にも
載っていませんよ。
では、ロングビーチ空港の
Chart Supplement を例に挙げて
見ていきましょう。
上から太字の項目を追っていくと
LAND AND HOLD-SHORT OPERATIONS
というのがありますね。
そこには、どんなデータが記されているかというと
LDG RWY(ランディング・ランウェイ)
HOLD-SHORT PONT(ホールド・ショート・ポイント)
AVBL LDG DIST(アベイラブル・ランディング・ディスタンス)
この3点です。
LDG = LANDING
RWY = RUNWAY
AVBL = AVAILABLE
などのような省略表記も
少しずつ覚えていきましょう。
Airport Diagram の説明で挙げた
ランウェイ30を見てみましょう。
ランウェイ30に着陸する際、
ホールド・ショート・ポイントは
ランウェイ07L-25R の手前という意味です。
では、AVBL LDG DIST とは?
AVAILABLE LANDING DISTANCE の略で
使用可能な着陸距離ということです。
ランウェイ Threshold から
ホールド・ショート・ポイントまでの距離で
単位はフィートです。
つまり、
LAHSO クリアランスを受けての着陸で
使用可能なランウェイの長さは
5,850フィートということです。
セスナのような小型機にとっては
十分な着陸距離があると確認できるわけですね。
ところで、
LAHSO クリアランスは
常にコントロールタワーのさじ加減で
出されるということではありません。
そこには最低条件が必要なんです。
それは、少なくとも
Basic VFR conditions 以上の
気象条件であるということです。
覚えていますか?
雲底高度が1,000フィート以上で
地上視程が3マイル (陸里)以上というものでしたね。
MINIMUM WEATHER
FOR LAHSO CLEARANCE
Basic VFR conditions
1,000’ ceiling
3 STATUTE miles visibility
MINIMUM WEATHER
:気象限界
FOR LAHSO CLEARANCE
:ラーソ・クリアランスのため
Basic VFR conditions
:基本の 有視界飛行 気象条件
1,000’ ceiling
:雲底高度1,000フィート
3 STATUTE miles visibility
:地上視程3マイル (陸里)
Weather Minimums の
カテゴリーをしっかり読んでいただいている
あなたなら分かり切っていると思いますが、
視程の単位といったら
STATUTE miles です。
筆記テストでは、
Statute と Nautical どちらのマイルかを
選択させる問題があります。
もし迷ってしまったら
距離の短い方を選ぶということです。
1Statute mile = 1,609メートル
1Nautical mile = 1,852メートル
考え方として最低条件を
表す数値ということですから
厳しい方を選ぶというように
覚えてしまいましょう。
では、次に進みましょう。
仮に LAHSO クリアランスを受けて
着陸したとしますね。
LAHSO ポイント/ポジションは
Airport Diagram には
破線で示されていました。
では、実際の滑走路上では
どのように表示されているのでしょう?
誘導路から滑走路に入る手前にある
Runway Hold Position と同じなんです。
舗装面に
黄色の4本線 (2本の実線・2本の破線) が
ペイントされているんです。
また、赤地に白文字で
ランウェイナンバーが表記された
標識があるということも同じですね。
いずれも交差滑走路が
目の前にあることを示しています。
RUNWAY / RUNWAY HOLD POSITION
Intersecting runways
RUNWAY / RUNWAY HOLD POSITION
:ランウェイ/ランウェイ・ホールド・ポジション
Intersecting runways
:交差しているランウェイ
<まとめ>
Land And Hold Short Operations (LAHSO)
LAHSO clearance
◎指定ポイントまでに停止する条件付の着陸許可
◎交差滑走路を同時に有効活用し、地上移動の遅れを減らすことが目的
◎このクリアランスを受ける受けないは機長の権限によるものである
◎安全に遂行できないと判断した場合は辞退するべきである
◎受け入れ後も機長の判断で Go around できる
LAHSO clearance を受けてはダメな人
◎訓練生パイロット
目的地空港の LAHSO の事前確認
◎Chart Supplement で使用可能な着陸距離をチェック
LAHSO clearance 最低条件
◎Basic VFR conditions
(雲底高度1,000ft・視程3陸里)
LAHSO ポイント/ポジションの標識等
(Runway / Runway hold positions)
◎ランウェイ・ホールド・ポジションと同じ表示
◎すぐ先に交差している滑走路があることを示す
ということで、練習問題にトライしてみましょう!
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Q1 : Who should not participate in the Land and hold short operations (LAHSO) program?
A : Recreational pilots only.
B : Military pilots.
C : Student pilots.
Who should not participate
:誰 参加すべきでない
in the Land and hold short operations (LAHSO) program?
:ラーソ 計画に
Recreational pilots only.
:レクレーショナル・パイロットだけ
Military pilots.
:軍パイロット
Student pilots.
:訓練生パイロット
・
・
・
自力で回答してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q2 : Who has final authority to accept or decline any land and hold short (LAHSO) clearance?
A : Pilot in command.
B : Air Traffic Controller.
C : Second in command.
Who has final authority
:誰が持つ 最終権限
to accept or decline any land and hold short (LAHSO) clearance?
:受けるか辞退するか ラーソ・クリアランスを
Pilot in command.
:機長
Air Traffic Controller.
:航空管制官
Second in command.
:2番目のコマンド
・
・
・
自力で回答してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q3 : When should pilots decline a land and hold short (LAHSO) clearance?
A : When it will compromise safety.
B : Only when the tower operator concurs.
C : Pilots can not decline clearance.
When should pilots decline
:いつ パイロット 辞退すべきか
a land and hold short (LAHSO) clearance?
:ラーソ・クリアランスを
When it will compromise safety.
:損なわれるであろうとき 安全が
Only when the tower operator concurs.
:ときだけ タワーの管制官 同意する
Pilots can not decline clearance.
:パイロット 辞退できない クリアランスを
・
・
・
自力で回答してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q4 : Where is the “Available Landing Distance” (ALD) data published for an airport that utilizes land and hold short operations (LAHSO)?
A : Chart Supplement (Formerly the Airport Facility Directory).
B : 14 CFR Part 91, General Operating and Flight Rules.
C : Aeronautical Information Manual (AIM).
Where is
:どこですか
the “Available Landing Distance” (ALD) data published for an airport
:使用可能な着陸距離のデータ 公開されている 空港の
that utilizes land and hold short operations (LAHSO)?
:それは役立つ ラーソ・オペレーションに
Chart Supplement (Formerly the Airport Facility Directory).
:チャート・サプリメント(旧エアポート・ファシリティ・ディレクトリ)
14 CFR Part 91, General Operating and Flight Rules.
:連邦航空規則パート91、一般的運航と飛行規則
Aeronautical Information Manual (AIM).
:航空情報マニュアル
・
・
・
自力で回答してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q5 : What is the minimum visibility for a pilot to receive a land and hold short (LAHSO) clearance?
A : 3 nautical miles.
B : 3 statute miles.
C : 1 statute mile.
What is the minimum visibility
:何ですか 最小視程は
for a pilot to receive a land and hold short (LAHSO) clearance?
:パイロット 受けるため ラーソ・クリアランスを
3 nautical miles.
:3ノーティカル・マイル(海里)
3 statute miles.
:3スタチュート・マイル(陸里)
1 statute mile.
:1スタチュート・マイル(陸里)
・
・
・
自力で回答してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q6 : What is the purpose of the runway / runway hold position sign?
A : Denotes entrance to runway from a taxiway.
B : Denotes area protected for an aircraft approaching or departing a runway.
C : Denotes intersecting runways.
What is the purpose of the runway / runway hold position sign?
:何ですか 目的は ランウェイ/ランウェイ・ホールド・ポジション 標識の
Denotes entrance to runway from a taxiway.
:示します 入口を ランウェイへの タクシーウェイから
Denotes area protected
:示します 区域を 保護された
for an aircraft approaching or departing a runway.
:航空機のため ランウェイを出入りする
Denotes intersecting runways.
:示します 交差しているランウェイを
・
・
・
自力で回答してから
音声を聞いてください。
はい。どうでしたか?
筆記テスト対策ということで
LAHSO について説明してきましたが、
ライセンス取得を目指している段階の
あなたが実際に出くわすことは稀だと思います。
訓練生パイロットは
受けられないクリアランスと
決められていますからね。
ですが、
そういう空港をベースにしている
フライトスクールで訓練をするのであれば、
LAHSO クリアランスを辞退する練習を
たくさん積めるという考えもできますね。
それなりに忙しい空港であることは
間違いないでしょうから
それ相応の英語力も必要になると思います。
いずれにしても
LAHSO に関する筆記テスト対策は
今回の内容を十分理解していただければ
大丈夫です。
引き続き頑張っていきましょう。
はい。
ということで今回は以上となります。
今日も最後まで読んでいただいて
ありがとうございます!
ではまた!
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