[FAR : 連邦航空規則]
パイロット免許への水先案内人
須永です!
前回は、
Safety Belts and Shoulder Harnesses
(安全ベルトと肩バンド)
についてお話しさせていただきました。
自動車のシートベルトは
衝突の際に
その衝撃で身体が車外に
投げ出されないようにすることが
主な目的になります。
衝突することを前提として
装備されているんですね。
一方、
航空機の安全ベルトや肩バンドは
予期しない機体の揺れによって
身体が宙に浮いて
座席から離されてしまうのを
防ぐことが主な目的なんですね。
乗客であれば
宙に浮いた後の落下による
怪我を防止したり、
パイロットとしては
当然、怪我防止もありますが、
何より一瞬たりとも操縦業務から
手足が離れてしまうことを
防ぐためなんですね。
だから、
パイロットはフライトの全行程で
安全ベルトの装着が
義務づけられていることを
理解していただけましたか?
今回は、
Oxygen Use (酸素使用)
についてお話したいと思います。
Supplement Oxygen (酸素補充) の
使用方法の規則について
見ていきましょう。
高く上昇するほど
空気は薄くなります。
それに伴い
一体積に含まれる酸素量も
地上と比べると
上昇すればするほど
少なくなっていきます。
酸素補充をしないまま
体内に取り込む酸素量が不足すると
Hypoxia (低酸素症) に陥ってしまいます。
低酸素症とは、
脳に必要な酸素が不足することです。
HYPOXIA
Lack of adequate oxygen to brain
HYPOXIA
:低酸素症
Lack of adequate oxygen to brain
:不足 十分な酸素の 脳への
低酸素症に陥ると
反応も鈍くなり、頭痛も伴ってきます。
判断力も悪くなってしまいます。
そういった状況を防ぐために
機内で酸素補充をするわけです。
そこで、
クルーメンバーにとって
酸素補充が必要となる高度と
そうでない高度を
規則で区別しているということです。
気圧高度が
海抜12,500フィート以下の範囲では
酸素補充は規則としては
必要とされません。
中には
その日の体調や個人差によって
酸素補充した方が良いという人が
現れるかも知れません。
ですが、
規則的には必要とされていないのです。
では、
気圧高度が海抜12,500フィートを超え
海抜14,000フィートまでの
範囲内についてなんですが、
この高度で30分以上の飛行になる場合
クルーメンバーは
酸素補充が必要となります。
OXYGEN FOR PILOT
12,500’-14,000’ MSL
after 30 minutes
OXYGEN FOR PILOT
:パイロットのための酸素
12,500’-14,000’ MSL
:海抜12,500フィートから14,000フィート
after 30 minutes
:30分が経過したら
さらに、気圧高度が
海抜14,000フィートを
超える空域においては
たとえ
1~2分であろうと時間に関わらず
パイロットは必ず酸素補充を
しなければいけないのです。
では乗客についてはどうでしょう?
乗客については
少し違う規則が適用されています。
機内の気圧高度が
海抜15,000フィートを超えた場合は
全ての乗客に酸素が
提供されないといけません。
ただし、
提供されないといけないことと
使用しなければいけないなことは
一緒ではないのです。
もしも、ある乗客が
酸素補充を拒んだ場合は
それでも大丈夫です。
絶対に酸素補充する義務が
あるわけではないからです。
そんな乗客は座席に着き
静かに酸素が薄い状況から
脱出するまでやり過ごせば良いのです。
しかし、
パイロットであるあなたは
その乗客が使いたくなった際、
直ぐに使用可能な状態にあるかを
確認しておくことが大切です。
しかし、
”大型旅客機などは
普通に30,000フィート以上で
飛行しているのに
乗客は酸素マスクしてないよ!”
って思う人もいるはずですよね。
ここでキーポイントとなるのが
機内の気圧高度です。
大型旅客機などは
与圧といって
機内の気圧を高く
維持することができます。
私たちは地上では
1気圧の中で生活していますね。
与圧によって機内の気圧を
約0.8気圧にキープしているのです。
それによって機内の人々は
地上とあまり変わらない酸素量を
通常の呼吸で得ることができるのです。
これは機内の気圧高度が
低く保たれているということなんですね。
しかし、
何らかのトラブルによって
機内が減圧されると
直ちに天井から酸素補充マスクが
降りてくる光景は
テレビ・映画などで誰もが
一度は見たことがありますよね。
これは、
一気に機内の気圧高度が上昇して
通常の呼吸では十分な酸素を
得られなくなってしまうからなんですね。
SUPPLEMENTAL OXYGEN FOR PASSENGERS
Available above 15,000 ft. MSL cabin pressure altitude
SUPPLEMENTAL OXYGEN FOR PASSENGERS
:乗客のための酸素補充
Available above 15,000 ft. MSL cabin pressure altitude
:すぐ利用できる 海抜15,000フィート超で 機内の気圧高度が
別の言い方をすると
与圧システムを装備していない航空機は
海抜15,000フィート以上は
飛行していけないということですね。
<まとめ>
Oxygen Use (酸素使用)
Hypoxia (低酸素症)
◎脳への十分な酸素の不足
海抜12,500フィート以下
◎酸素補充は必要としない
パイロット
海抜12,500フィートを超え
海抜14,000フィートまで
(30分以上の飛行の場合)
◎酸素補充が必要
海抜14,000フィートを超える
◎時間に関わらず酸素補充が必要
乗客
海抜15,000フィートを超える場合
◎酸素補充を利用できる
では、練習問題にトライしてみましょう!
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Q1 : When operating and aircraft at cabin pressure at all to do use about 12,500 feet MSL up to and including 14,000 feet MSL, supplemental oxygen shall be used during
A : the entire flight time at those altitude.
B : that flight time in excess of 10 minutes at those altitude.
C : that flight time in excess of 30 minutes at those altitude.
When operating and aircraft at cabin pressure at all to do use about 12,500 feet MSL up to and including 14,000 feet MSL,
:運航中 機内気圧高度が 海抜約12,500フィートから14,000フィートで
supplemental oxygen shall be used during
:補充酸素が使われる ・・・の間
the entire flight time at those altitude.
:全ての飛行時間 その高度の
that flight time in excess of 10 minutes at those altitude.
:10分を上回る その飛行時間 その高度での
that flight time in excess of 30 minutes at those altitude.
:30分を上回る その飛行時間 その高度での
・
・
・
自力で回答してから音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q2 : Unless each occupant is provided with supplemental oxygen, no person may operate a civil aircraft of U.S. registry above a maximum cabin pressure altitude of
A : 12,500 feet MSL.
B : 14,000 feet MSL.
C : 15,000 feet MSL.
Unless each occupant is provided with supplemental oxygen,
:それぞれの搭乗者に補充酸素が提供されない限り
no person may operate a civil aircraft of U.S. registry
:運航する者は一人もいない 民間機を 合衆国登録の
above a maximum cabin pressure altitude of
:最高気圧高度を超えての ・・・の
12,500 feet MSL.
:海抜12,500フィート
14,000 feet MSL.
:海抜14,000フィート
15,000 feet MSL.
:海抜15,000フィート
・
・
・
自力で回答してから音声を聞いてください。
はい。どうでしたか?
低酸素症に陥ったことに
自分では気づきにくいものです。
高い高度を飛行する場合は
決められた規則を
しっかり守り
防げるミスは
未然に防止するように
心がけましょうね。
ということで、今回は以上となります。
今日も最後まで読んでいただいて
ありがとうございます!
ではまた!
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