操縦に潜む罠とは・・・

[Flight Operations : 運航]

パイロット免許への水先案内人

須永です!

 

 

前回は、

Risk Elements (危険要素) について

お話しさせていただきました。

 

航空事故の原因の大半は

人的ミスであるという事実と

事故を減らすために

人間の行動をシステム的に考えて

より正しい判断を行うという方法を

理解していただけましたか?

 

 

 

今回は、

Common Behavioral Traps (共通する行動の罠)

についてお話したいと思います。

前回お話したパイロットの

危険な姿勢・態度というのは

気がつかないでいると

より厳しい罠に捕まってしまいます。

IFR コンディションのような

低い雲に覆われている状況で

その低い雲の下を強引に飛行することを

Scud running といいます。

雲の中に入らず (当然 IFR の資格が無ければ入れませんが)

あくまでも地表を見ながら超低空を飛行する行為なんです。

その危険性は容易に想像できますよね。

普通の細い電線などの障害物は

飛行中は目視できません。

小型機にとっては非常に危険な

障害物なわけです。

また、低空で乱気流に

遭遇もしたくないですよね。

あるいは、目の前に突如

現れた障害物などの理由で

急激な機首上げ操作を強いられて

失速なんてことも

考えられるわけです。

その場合、安全にリカバリーするための

高度が足りませんから

Scud running

非常に危険な飛行ということなんですね。

COMMON BEHAVIORAL TRAPS

Scud running

COMMON BEHAVIORAL TRAPS

:共通する 行動の 罠

Scud running

:IFR気象条件での雲の下の超低空飛行

もう一つの例として

VFRのまま IFRコンディションの中 (雲) に

入っていくことです。

この場合、一番陥りやすい状況というと

Spatial Disorientation です。

覚えていますか?

雲の中に入ると

コックピットから見えるのは

真っ白な世界です。

地平線が見えませんので

機体の姿勢が目視による情報だけで

判断できなくなってしまうのです。

実際には水平直進飛行していても

ターンしているんじゃないのか???

と脳が混乱してしまうやつですね。

そんな状況で且つ

地表の起伏や障害物にも

気づけませんから

そのまま山に衝突なんてことも

あり得るわけです。

COMMON BEHAVIORAL TRAPS

Continuing VFR flight

into instrument conditions

COMMON BEHAVIORAL TRAPS

:共通する 行動の 罠

Continuing VFR flight

:続けること 有視界飛行

into instrument conditions

:の中へ 計器気象条件

加えて

一つのフライトを遂行するには

飛行計画の作成、飛行前点検など

するべきことや

様々な場面で確認するべきことが

ありますよね。

ところが、

経験が豊富になってくると

つい面倒になって

チェックリストを怠ることも

生じたりしてしまうのです。

それらは当然チェックリストを使って

行われるものなんですが、

数をこなしていくうちに

チェック項目を暗記してしまう部分も

出てきます。

そうなると自分の記憶だけに

頼りたくなってしまうんですね。

ですが、チェックリストの意義は

必要事項を適切な順序で

漏れのないように確認するためのものです。

パイロットの大切な業務のひとつとして

危険を誘発するような行為は

避けなければなりません。

そのためには

常にチェックリストに沿って

全てを確認することが

大事なことなんです。

くり返しますよ。

パイロットの仕事は航空機を

飛ばすことだけではありませんよ。

主な仕事として

危険を管理することが挙げられます。

自分の技量を過信することなく

真摯な態度と姿勢で

安全第一のフライトを遂行していきましょう。

<まとめ>

Common Behavioral Traps (共通する行動の罠)

Scud running

計器気象条件下で低い雲の下を無理やりVFRで超低空飛行を行う危険行為

Continuing VFR into Instrument Conditions

VFRのまま計器気象条件の中へ入っていく危険行為

Neglect of Flight Planning, Preflight Inspections, and Checklists

飛行計画、飛行前点検、チェックリストの無視や放棄

以下は説明の中には出てきませんでしたが、いくつかの項目をつけ加えておきます。

Peer Pressure

他人の目が気になって無理をしたり冷静な判断が出来ない状態

Mind Set

ある考え方を固めてしまって変化に応じて変えることができない状態

(臨機応変に対応できない)

Get-there-itis

最初の目的地に到達することに執着して異常なサインを無視し、無理してでも最後まで突進してしまう状態

Duck-Under Syndrome (IFR)

計器飛行進入で故意的に最低高度以下を飛行してしまうこと

(ここまで下がって滑走路が見えなければ Go around だが、もう少し下がれば見えるはずと信じて無理に降下をする)

Getting Behind the Aircraft

次々と発生する状況に対応出来ていない状態

(パイロットの判断や能力より航空機が早く進んでしまう状態で、全てが後手のように対応が遅れてしまう状態)

Loss of Positional or Situational Awareness

パイロットが Behind the Aircraft の状態になって、最悪は迷子や自己の状況が分からなくなる場合

Descent Below the Minimum En Route Altitude

これも IFR に関してですが、

Duck-under syndrome と同じことを着陸進入以外のルート上で起こしてしまうこと

Flying Outside the Envelope

(航空機の性能は決まっていてその範囲内でしか飛行しませんその範囲を Envelope という)

自信過剰になると航空機の性能まで良くなったと勘違いして無理な飛行をしてしまうこと

では、早速練習問題にトライしてみましょう!

・・・・・・・・・・・・・・・

Q1  :  What is it often called when a pilot pushes his or her capabilities and  the aircraft’s limits by trying to maintain visual contact with the terrain in low visibility and ceiling?

A  :  Scud running.

B  :  Mind set.

C  :  Peer pressure.

What is it often called

:何としばしば呼ばれているか

when a pilot pushes his or her capabilities and the aircraft’s limits

:パイロットが彼または彼女の能力と航空機の性能限界を見せびらかすとき

by trying to maintain visual contact with the terrain

:試みることで 地形を目視しつづけること

in low visibility and ceiling?

:低い視程と低い雲底の中で

Scud running.

:IFRコンディションでのVFRによる低空飛行

Mind set.

:臨機応変に対応できない状態

Peer pressure.

:人の目が気になり無理をしてしまう状態

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q2  :  What often leads to spatial disorientation or collision with ground / obstacles when flying under Visual Flight Rules (VFR)?

A  :  Continual flight into instrument conditions.

B  :  Getting behind the aircraft.

C  :  Duck-under syndrome.

What often leads

:何がしばしば繋がりますか

to spatial disorientation or collision with ground / obstacles

:空間識失調 または 衝突 地面・障害物との

when flying under Visual Flight Rules (VFR)?

:有視界飛行中

Continual flight into instrument conditions.

:継続的な飛行 計器飛行条件の中への

Getting behind the aircraft.

次々と発生する状況に対応出来ていない状態

Duck-under syndrome.

計器飛行進入で故意的に最低高度以下を飛行してしまうこと

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q3  :  What is one of the neglected items when a pilot relies on short and long term memory for repetitive tasks?

A  :  Checklists.

B  :  Situation awareness.

C  :  Flying outside the envelope.

What is one of the neglected items

:何ですか 怠られた アイテムのひとつは

when a pilot relies on short and long term memory

:パイロット 頼るとき 短期及び長期記憶に

for repetitive tasks?

:反復的仕事のため

Checklists.

:チェックリスト

Situation awareness.

:状況認識

Flying outside the envelope.

:航空機の性能限界を超えた飛行

自力で回答してから

音声を聞いてください。

はい。どうでしたか?

心の緩みが生じると

面倒がって守るべきルールを

無視したり怠ったりしてしまうようですね。

改めて気を引き締めていくことの

大切さを分かっていただけましたか?

怠慢は重大な事故の原因に

なり得ます。

安全が優先第一です。

カッコいいよりも

信頼できるパイロットになりましょう。

ということで、今回は以上となります。

次回からは気象のカテゴリーに入っていきますよ。

楽しみにしていてください。

今日も最後まで読んでいただいて

ありがとうございます!

ではまた!

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