離陸距離を求める重要性

[Aircraft Performance : 航空機の性能]

パイロット免許への水先案内人

須永です!

 

前回は、

障害物をクリアする総離陸距離の求め方

についてお話させていただきました。

その日の気象条件と

機体の重量さらに

離陸後避けなくてはならない

障害物の有無によって

必要とされる離陸距離の

割り出し方をしっかり

マスターしていただけましたか?

 

今回は

離陸距離を求める重要性

について考えてみたいと思います。

必要な離陸距離を知ることは重要

Takeoff distance chart で

離陸距離を割り出すことの

重要性というのを

もう一度確認しておきましょう。

舗装された滑走路を持つ空港であれば、

ほぼ問題はないのかも知れません。

それなりの長さがある

滑走路を持っているからです。

ただ、広いアメリカの本土では、

舗装されていない滑走路だけの

飛行場も相当な数があるのです。

プライベートの飛行場も

数多くありますからね。

そのような飛行場の中には

距離の短い砂利の滑走路しかない

という所もあるわけですね。

そういった場所で

考えられるケースとして

例えば、こんな条件だったとしましょう。

1,800’ field elevation

2,100’ gravel runway

あなたは、

友人2人の乗客を乗せたフライトで

標高 1,800フィートにある

長さ 2,100フィート

砂利の滑走路がある飛行場に

着陸しました。

しばらくしてから

再び離陸を試みようとしたところで、

次のような状況に

直面していることに

気づいたとしたらどうでしょう?

warmer than expected

・予想より温度が暖かくなった

rough runway

・滑走路の表面は舗装されていないので粗い

 スムーズな加速が望めない

75 pounds under MTOW (Maximum Takeoff Weight)

・最大離陸重量まで 75ポンドに迫る機体の重量

1,980 takeoff distance over 50′ obstacle

・50フィートの障害物をクリアするまでの

 総離陸距離は 1,980フィートと割り出されました。

 しかし、滑走路は 2,100フィートしかありません。

障害物を越える高度まで

上昇するために、

計算上で

滑走路の94%もの長さが

必要となります。

あまりにもゆとりが有りません。

このような状況に

直面した場合の正しい判断を

筆記テストでは問われるわけです。

次の3つの選択肢が

提示されたとしたら、

どう判断しますか?

・向かい風が有利に働くので西に向かって離陸する

・乗客を残して離陸する

・温度が下がるまで待つ

1つ目は、

風の情報はどこにもありません。

西に向かう根拠がありません。

単なる思い込みに過ぎません。

乗客の生命を危険に

さらすことになります。

2つ目は、

機体の重量が軽くなれば、

安全に離陸できるからと、

なんの施設もないような場所に

友人をポツンと残して行けますか?

あとで迎えに来るからと

自分だけでその場を立ち去れますか?

無理ですよね。

3つ目の

「温度が下がるまで待つ」これが

一番賢明な選択となります。

温度が下がれば、

密度高度も下がることは、

あなたも知っての通りです。

密度高度が高くなると

航空機の性能は落ちますよね。

逆に密度高度が低くなれば、

航空機の性能は向上します。

ということで、

筆記テストでは、

温度が下がるまで待つ」

この選択肢を選んでくださいね。

しかし、

このような状況に

ならないようにするために

その飛行場に着陸する前に

総離陸距離を割り出しておけば、

事無きを得られるわけです。

いかなる状況も想定して

準備することが

大切だということですね。

今回はこれだけですので

早速練習問題に挑戦してください。

練習問題にトライしてみよう!

Q  :  Pilot and two passengers landed on a 2,100 foot east-west gravel strip with an elevation of 1,800 feet.  The temperature is warmer than expected and after computing the density altitude it is determined the takeoff distance over a 50 foot obstacle is 1,980 feet. The airplane is 75 pounds under gross weight. What would be the best choice?

A  :  Takeoff to the west because the headwind will give the extra climb-out time needed.

B  :  Try a takeoff without the passengers to make sure the climb is adequate.

C  :  Wait until the temperature decreases, and recalculate the takeoff performance.

Pilot and two passengers landed on a 2,100 foot east-west gravel strip with an elevation of 1,800 feet.  

:パイロットと2人の乗客は着陸した 長さ2,100フィートの東西に伸びる砂利の滑走路に 標高1,800フィートの

The temperature is warmer than expected and after computing the density altitude it is determined the takeoff distance over a 50 foot obstacle is 1,980 feet.

:温度は予想よりも暖かく 密度高度を計算した後 50フィートの障害物を越える離陸距離は1,980フィートと判断される

The airplane is 75 pounds under gross weight.

:飛行機の総重量は 許容最大値まで75ポンドです

What would be the best choice?

:何が最善の選択でしょうか?

Takeoff to the west because the headwind will give the extra climb-out time needed.

:離陸する西に向かって なぜなら向かい風が 与えるため 必要とされる余分な上昇時間を

Try a takeoff without the passengers to make sure the climb is adequate.

:離陸を試す乗客なしで 確認するため 上昇が適切であることを

Wait until the temperature decreases, and recalculate the takeoff performance.

:温度が低下するまで待ち 再計算する 離陸性能を

この問題は本文の例題と同じ内容のため

音声解説は割愛させていただきます。

英文の表現を感じてください。

正解は、最後に記載してあります。

あとがき

はい。どうでしたか?

本文では距離の短い砂利の滑走路

という状況についてでしたが、

舗装された十分に長さのある

滑走路であったとしても、

やはり離陸距離の算出は重量です。

2016年3月、大阪の八尾空港に於いて

小型機の墜落事故が発生しましたね。

原因は最大離陸重量を超過していたことに

機長が気づかず、

正確には確認を怠ったためとされています。

絶対にあなたは

このようなパイロットには

ならないでくださいね。

引き続きよろしくお願いします!

ということで、今回は以上となります。

今日も最後まで読んでいただきまして

ありがとうございます!

ではまた!

正解は、

C  :  Wait until the temperature decreases, and recalculate the takeoff performance.

です。

お疲れさまでした。

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