[Electronic Navigation : 電子航法]
パイロット免許への水先案内人
須永です!
前回まで、何度かに亘って
VOR についての筆記テスト対策について
お話してきました。
出題される問題に合わせての
解説となりましたので、
自機の位置の探し方や
VOR の表示の読み方が中心の
内容だったと思います。
実際の航法では、どんな使い方になるのかについては
まだ、お話できていませんでしたので、
おさらいをしながら少し説明していこうと思いますね。
VOR
(Very High Frequency Omni-Directional Range)
VOR は、
Very High Frequency Omni-Directional Range
の略で、「長短波全方向式無線標識施設」と
訳されいます。
地上に設置された VOR は、
電波を放射方位(Radial)に発射しています。
航空機に搭載された VORレシーバーと
VORインディケーターは、
その放射方位(Radial)を
選択できるようになっています。
それから VORインディケーターは、
パイロットであるあなたが選択した放射方位を
飛行コースとして利用できる機能が備わっているのです。
VORインディケーターは、
次の主要部からできていますよ。
B の OBS (Omni-Bearing Selector) は
A の360°の方位ダイヤルを回転させるつまみです。
C の CDI (Course Deviation Indicator) は
左右に動く針のことです。
パイロットが選択した放射方位に対して
機体が右、あるいは左にどれ位ずれていることを
知らせてくれるんですね。
針が動く部分にドットがついていますが、
1ドット2°の間隔で偏位を表示しています。
D の TO/FROMインディケーターは、
パイロットが選択した放射方位のライン上を
飛行機が VOR に向かっている場合は
TO の文字と △ を指示します。
VOR から遠ざかっている場合は
FROM の文字と ▽ を表示します。
また、VOR を通過中(真上付近)では
CDI の針が大きくどちらかに振れ
TO の文字と △ が一時的に消えて
通過中であることを示します。
通過後は、FROM の文字と ▽ に変化することで
VOR 上空を通過したことを示すのです。
VOR Tracking
VOR で設定したコース上を
風の影響を修正しながら飛行することを
VORトラッキングといいます。
では、簡単に VORトラッキングについて
例を挙げながら説明していきたいと思います。
ある VORTAC の放射方位(Radial)210°上を
北上する上で西寄りの風を受けながら
飛行する場合を考えてみましょう。
1:VORTAC の放射方位(Radial)210°上を
VORTAC に向かって飛行するわけですから
OBS は、030°となりますね。(210-180=30)
TO/FROMインディケーターは、TO△ になります。
2:もし、飛行機が機首方位を
OBS と同じ 030°を維持していたとすると
西からの風の影響でコースの右に偏位(逸脱)
することになります。
飛行機が西風の影響を受けて徐々に右に偏位すると
CDI は同時に徐々に左に振れて
元の設定コースは、現在位置よりも
左にあることを示します。
同時にその偏位の角度をドットの数で表示するのです。
元のコースに戻るために機首方位(ヘディング)を
風上側の左に30°変更して
ヘディング360°で飛行することにしましょう。
飛行機が元のコースに近づくにつれ、
CDI もゆっくりと中心に戻ってきてくれました。
3:CDI が中心に戻れば、飛行機は最初に設定した
コース上に戻ったわけですから、飛行機のヘディングも
右に戻さなければなりません。
ですが、ここでは最初のヘディング030°には
戻さないでください。
なぜなら設定したコース上を飛行するためには
偏流修正角が必要だからです。
(※ 偏流修正角については、後のフライトコンピュータの使い方のところで詳しくご説明いたします。)
現在、西風が20ノット程度と仮定しておきましょう。
そこで、
偏流修正角を求める概算式である
「風速ノット÷2」を利用して、
20÷2=10° の10°を風上側に修正して
ヘディング020°で飛行することにしましょう。
4:ヘディング020°で飛行していると、
今度はゆっくりとですが、CDI が右に動き始めました。
これは偏流修正角が大きすぎて飛行機が
コースの左側、すなわち風上側に偏位し始めたことを
意味しています。
ヘディング030°にして、風に流されるのを利用して
元のコースに戻りましょう。
5:CDI が中心に戻ったので、今度は偏流修正角を
少し減らした5°として、ヘディング025°で
飛行してみましょう。
もし、偏流修正角が適量であれば
飛行機は設定したコース上を飛行できるはずです。
もし、飛行機が再び左右どちらかに
偏位し始めるようであれば、
CDI を中心に維持するように
偏流修正角とヘディングを微調整しながら
コース上を飛行するようにしてくだい。
6:飛行機が VOR の直上を通過する際、
CDI が左右に大きく不規則に振れてから
再び中心付近に安定します。
この時、TOインディケーターは消失して
通過後は、FROMインディケーターが表示され
VOR を通過したことを示します。
もしも飛行機が VOR の直上ではなく
左右どちらかにずれて VOR の直近を通過した場合は
CDI は VOR の存在する側に振れて
TOインディケーターの表示は
FROMインディケーターに入れ替わります。
FROM VOR で飛行する場合には
パイロットは、OBS を操作する必要はありませんよ。
FROM VOR のトラッキングの方法は
TO VOR の場合と同じです。
唯一の違いは、TO△表示が
FROM▽表示になっている点だけですね。
もしも、その VOR からコースを変更したい時は
OBS を選択し直して新たなコースに
トラッキングしていくだけです。
ということで、あなたは VOR について
必要な知識は全て知ったことになりましたよ。
さて、このとても頼りになる VOR が
正確に働いているのかどうかを
チェックする方法があるんですね。
VHF Omni Test (VOT)
と呼ばれるものです。
これは、Airport Facility Directory (Chart Supplement) に
記載されている周波数によって
チェックすることが出来るんですよ。
そこから一番近い VOT 周波数を探すのです。
最寄りの VOT 周波数は、
こんな感じで記載されていますよ。
VOR TEST FACILITY (VOT) 110.0
とありますね。
これは、110.0 MHz でテストが出来るということです。
地上において VORレシーバーをこの周波数にセットします。
その後、OBS を360°に合わせると FROM の表示になり
OBS を180°に合わせるとすると TO の表示になれば、
あなたの VORレシーバーと VORインディケーターは、
正常に機能しているということを意味しているのです。
あなたの機体がどこに居ようとも
下の通りに表示されるようになっています。
360° FROM
180° TO
もしも、記憶が曖昧になってしまった場合は、
セスナ182という機種を思い浮かべてください。
ワン・エイティ・トゥー (180 TO)
これで、もう迷いませんよね!
はい。ということで、VOR に関する最後の
練習にトライしてみましょう!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Q:When the course deviation indicator (CDI) needle is centered during an omni receiver check using a VOR test signal (VOT),the omnibearing selector (OBS) and the TO/FROM indicator should read
A : 180° FROM, only if the pilot is due north of the VOT.
B : 0° TO or 180° FROM, regardless of the pilot’s position from the VOT.
C : 0° FROM or 180° TO, regardless of the pilot’s position from the VOT.
When the course deviation indicator (CDI)needle is centered
:の時 コース偏位表示ニードル 中心である
during an omni receiver check
:の間 全方位レシーバー 確認
using a VOR test signal (VOT)
:使っている VORテスト信号
the omnibearing selector (OBS) and the TO/FROM indicator should read
:全方位選択器 と TO/FROMインディケーター 読まれるべき
180° FROM
:180° FROM
only if the pilot is due north of the VOT
:の時だけ もしパイロット ことになっている VOTの北
0° TO or 180° FROM
:0° TO 又は 180° FROM
regardless of the pilot’s position from the VOT
:に関係なく パイロットの位置 VOTから
0° FROM or 180° TO
:0° FROM 又は 180° TO
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
はい。どうでしたか?
VOR については、
そこそこボリュームがありましたね。
近年、GPS などの新しいナビゲーションシステムが
増えてはきましたが、小型機の世界では
まだまだ VOR の存在は生命線的な
存在であるということだと思うのです。
しっかりと自分のものにして
安全なパイロットになることを目指してくださいね。
では、次回からは運航の分野に
入っていこうと思います。楽しみにしていてください。
ということで、今回は以上となります。
今日も最後まで読んでいただいて
ありがとうございます。
ではまた!
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