Accident and Incident Notification (重大事故と安全飛行に影響のある出来事の通知) 

FAR

[FAR : 連邦航空規則]

 

パイロット免許への水先案内人

須永です!

 

 

前回は、

Emergency Locator Transmitters (ELTs) 救命無線機

についてお話しさせていただきました。

 

車の事故と航空機のそれとでは

そもそもの絶対量や交通条件も

違い過ぎるので、

単純に事故発生率で比較することは

出来ないのかも知れませんが、

圧倒的に航空機の方が安全です。

 

ですが、事故は起こってしまうものです。

ひとたび事故が発生した際、

生活圏を行き来している

自動車事故のであれば場合は

意識を失ったドライバーの代わりに

周りの目撃者によって

救急と警察に連絡が入ることでしょう。

 

ところが、人里離れ場所に

落ちてしまった航空機の場合は

同じようにはいきません。

 

そこで役立つのが

ELT の存在だということを

理解していただけましたか?

 

 

回は、

Accident and Incident Notification

(重大事故と安全飛行に影響のある出来事の通知) 

についてお話したいと思います。

 

前回もお話しした通り

ELT を装備する目的は、

墜落してしまった航空機の位置を

捜索するために非常に役立つからでしたね。

 

もしも、事故に遭ってしまった場合

NTSB (National Transportation Safety Board)

国家運輸安全委員会

運輸事故を調査し、原因を究明、

その結果から将来の事故防止にむけて

対策を研究することになっているのです。

 

 

 

 

アクシデントとは

ここでいうアクシデントとは

人の死亡、重体といった深刻な事故である場合、

または乗客の怪我の有無に関わらず

航空機に大きな損害を受けた事故のことです。

ACCIDENT

Death or serious injury-person

Substantial damage-aircraft

 

ACCIDENT

:アクシデント

Death or serious injury-person

:死亡または重傷 – 人

Substantial damage-aircraft

:大きな損害 – 航空機

 

 

ひとたびアクシデントが発生した場合は

NTSB直ちに知らせることが必要です。

 

ACCIDENT

Requires immediate notification of NTSB

 

ACCIDENT

:アクシデント

Requires immediate notification of NTSB

:NTSBの即時通知が必要

 

 

インシデントとは

アクシデント (事故) ではないが、

そこに繋がりかねない出来事のことを

アクシデントと区別してインシデントと呼んでいます。

 

INCIDENT

Affect safe operation but not accident

 

INCIDENT

:インシデント

Affect safe operation but not accident

:安全な運航への影響  アクシデントではないが

 

 

具体的にインシデントとなるものは

フライト中の火災や

操縦系統の故障や誤作動、

乗員が病気で乗務が出来ない事態などです。

 

INCIDENT

In-flight fire

Flight control failure or malfunction

Crew member gets ill and cannot perform duties

 

INCIDENT

:インシデント

In-flight fire

フライト中の火災

Flight control failure or malfunction

操縦系統の故障や誤作動

Crew member gets ill and cannot perform duties

乗員が病気で乗務が出来ない

 

 

また、

飛行中にプロペラのブレードの

全て又は一部の分離又は放出、

要するに外れてしまった場合も

通知義務のあるインシデントに当たります。

PROPELLER BLADE

Separation or release of ALL or a portion of blade in flight

 

PROPELLER BLADE

:プロペラブレード

Separation or release of ALL or a portion of blade in flight

:分離や放出 全て又は一部 ブレードの 飛行中において

 

 

ただし、

地上でのタキシング中に何らかの原因で

地面にプロペラがヒットしてしまい

ヒビが入ったり破損して外れてしまった場合は

通知義務のあるインシデントにはなりません。

プロペラ部に関しては

フライト中であるかないかで

報告義務のあるインシデントに

なるかならないかが決定するのです。

 

 

次にグラスコックピットのケースです。

アナログ計器に代わりに

モニターに集約して情報を提供する

電子計ディスプレイですね。

もしも、

モニター内に映し出される情報量が

通常の50%未満になってしまった場合も

通知義務のあるインシデント

ということになります。

モニター画面の面積の半分が

表示されないような場合です。

 

ただし、

モニター画面の全体が

点いたり消えたりするように

ちらつくような状態は

相当ひどくなって

操縦に支障が出るようになるまで

通知義務のあるインシデントにはなりません。

 

 

では、別のインシデントにいきますよ。

タービンエンジンを装備した

航空機についてです。

 

タービンエンジン内部の部品が

排気口以外から異物として

外に吐き出されているような場合は

通知義務のあるインシデントです。

 

例えば、

エンジン内部の

コンプレッサーブレードが破損して

排気口から排気ガスと一緒に

外に排出されたとしたら

問題であることは間違いありませんが、

空気の流れだけでみると

まだ正常の域といえるので

通知の義務はありません。

 

ところが、

エンジンカウルを突き破って

内部部品が飛び出したとなれば、

明らかに異常事態ということで

通知しなければいけません。

INTERNAL TURBINE ENGINE COMPONENT

Failure that results in the escape of debris other than out the exhaust

 

INTERNAL TURBINE ENGINE COMPONENT

:内部タービンエンジン部品

Failure that results in the escape of debris other than out the exhaust

:故障 破片の飛び出し 排気口以外の

 

 

もう一ついってみましょう。

たとえ、

プライベートパイロットの

テストであったとしても

出題されるかも知れませんので

覚えておきましょう。

 

IFR で飛行中、

仮にその航空機に

衝突防止システムが

装備されていたとしましょう。

 

そのシステムが他の航空機との

衝突を避けるため

”climb !climb !now!”

というように作動し

それに従って衝突回避の

操作を行った場合は

直ちに NTSB に

通知しなければなりませんから

覚えておきましょう。

ACAS / TCAS

Complying with a resolution advisory when IFR

 

ACAS / TCAS

:航空機衝突防止装置 / 空中衝突防止装置

Complying with a resolution advisory when IFR

:従う 解決の助言を得て IFRの時

 

 

以上のように通知義務のある

アクシデントとインシデントを

てきましたが、

報告書提出の期限も押さえておきましょう。

 

報告書提出期限

アクシデントの報告書提出の期限は

ズバリ10日以内です。

 

ACCIDENT REPORT

Must submit within 10 days

 

ACCIDENT REPORT

:アクシデント報告書

Must submit within 10 days

:提出しなければならない 10日以内に

 

 

では、

インシデントの報告書はというと

 

もし、

NTSB の要求があった場合に

10日以内です。

 

通知はしますが、

報告書までは自主的に

提出する必要はありませんからね。

そこがアクシデントとインシデントの違いです。

 

INCIDENT REPORT

May need to submit report

When requested

Within 10 days

 

INCIDENT REPORT

:インシデント報告書

May need to submit report

:必要かもしれない 報告書の提出

When requested

:要求されたときは

Within 10 days

:10日以内に

 

 

では、最後に

NTSB にアクシデント通知を

したときについてです。

 

通知後は、NTSB が到着する前に、

それ以上の機体のダメージを防ぐために

残骸の移動が必要になる場合もあります。

 

出来るだけそのままの状態で

調査してもらうことが理想ですので

この場合の移動はあくまでも

現状態を保存する目的でということです。

BEFORE ARRIVAL OF NTSB

Wreckage may be moved to protect from more damage

 

BEFORE ARRIVAL OF NTSB

:NTSB の到着前に

Wreckage may be moved to protect from more damage

:残骸は動かされても良い 守るために より多くのダメージから

 

 

 

まとめ

Accident and Incident Notification

(重大事故と安全飛行に影響のある出来事の通知) 

Accident

人の死亡、重体といった深刻な事故

◎航空機に大きな損害を受けた事故

◎NTSB に直ちに通知

◎10日以内に報告書の提出

 

Incident

◎アクシデントに繫がりかねない出来事

 ①通知義務あり

 ・フライト中の火災

 ・操縦系統の故障や誤作動

 ・乗員が病気で乗務が出来ない

 ・飛行中のプロペラ破損/分離

 ・グラスコックピット表示通常の50%未満

 ・排気口以外からタービンエンジン内部部品放出

 ・IFR 時に衝突防止装置の助言で回避操作あり

 

 ②通知義務なし

 ・タキシング中のプロペラ破損

 ・グラスモニター全面がちらつく状態

 ・排気口からタービンエンジン内部部品放出

 

◎報告書の提出:要求があれば10日以内

 

事故機の移動

◎それ以上のダメージから守るためであればNTSB の到着前に移動しても良い

 

 

CFR タイトル49 パート830 のリンクを

貼っておきますの参照してください。

https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=c92f8f32938ecceab464f09ffb52a83c&mc=true&node=se49.7.830_15&rgn=div8

 

 

 

練習問題にトライしてみよう!

・・・・・・・・・・・・・・・

Q1  :  If an aircraft is involved in an accident which results in substantial damage to the aircraft , the nearest NTSB field office should be notified

 

A  :  immediately.

B  :  within 48 hours.

C  :  within 7 days.

 

 

If an aircraft is involved in an accident

:もし航空機 巻き込まれ 事故に

which results in substantial damage to the aircraft ,

:結果 大きな損害を与える 航空機に

the nearest NTSB field office should be notified

:最寄りの NTSB 現地オフィスに通知する必要があります

immediately.

:すぐに

within 48 hours.

:48時間以内に

within 7 days.

:7日以内に

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q2  :  Which incident requires an immediate notification to the nearest NTSB field office?

 

A  :  A forced Landing due to engine failure.

B  :  Landing gear damage, due to a hard landing.

C  :  Flight control system malfunction or failure.

 

 

Which incident requires an immediate notification to the nearest NTSB field office?

:どのインシデントが 直ちに通知する必要がありますか 最寄りの NTSB 現場オフィスに

A forced Landing due to engine failure.

:強制着陸 エンジンの故障による

Landing gear damage, due to a hard landing.

:ランディングギアの損傷 ハードランディングによる

Flight control system malfunction or failure.

:操縦系統の誤動作または故障

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q3  :  May aircraft be moved prior to the time the NTSB takes custody?

 

A  :  Yes, but only if moved by a federal, state, or local law enforcement officer.

B  :  Yes, but only to protect the wreckage from further damage.

C  :  No, it may not be moved under any circumstances.

 

 

May aircraft be moved prior to the time the NTSB takes custody?

:航空機が動かされる可能性がありますか NTSB の管理下に入る前に

Yes, but only if moved by a federal, state, or local law enforcement officer.

:はい、ただし、移動された場合に限る 連邦、州、または地方の法執行官によって

Yes, but only to protect the wreckage from further damage.

:はい、ただし、守るためだけ 残骸を さらなる損傷から

No, it may not be moved under any circumstances.

:いいえ、移動することはできない いかなる状況下でも

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q4  :  The operator of an aircraft has been involved in an accident is required to file an accident report within how many days?

 

A  :  5.

B  :  7.

C  :  10.

 

 

The operator of an aircraft has been involved in an accident

:アクシデントに関与した航空機の運航者は

is required to file an accident report within how many days?

:必要があるか 事故報告書の提出を 何日以内に

5.

:5日

7.

:7日

10.

:10日

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q5  :  The operator of an aircraft has been involved in an incident is required to submit a report to the nearest field office of the NTSB

 

A  :  within 7 days.

B  :  within 10 days.

C  :  when requested.

 

 

The operator of an aircraft has been involved in an incident

:インシデントに関与した航空機の運航者は

is required to submit a report to the nearest field office of the NTSB

:必要とされる 提出すること 報告書を 最寄りの 現場オフィスに NTSB の

within 7 days.

:7日以内に

within 10 days.

:10日以内に

when requested.

:要求時に

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q6  :  Which incident involving propellers is reportable to the NTSB under part 830?

 

A  :  A ground strike.

B  :  Separation of a blade in flight.

C  :  Loss of the propeller governor control.

 

 

Which incident involving propellers is reportable

:どのインシデント プロペラに関する 通知義務があるか

to the NTSB under part 830?

:NTSB に パート830のもとに

A ground strike.

:地面に衝突

Separation of a blade in flight.

:分離 ブレードの 飛行中

Loss of the propeller governor control.

:喪失 プロペラガバナコントロールの

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q7  :  The complete loss of information of what percentage of the electronic display is considered to be a reportable incident by the NTSB?

 

A  :  More and than 50%.

B  :  25%.

C  :  Less than 50%.

 

 

The complete loss of information of what percentage of the electronic display

:電子ディスプレイの何パーセントの情報の損失が 完全な

is considered to be a reportable incident by the NTSB?

:考えられる 通知義務のあるインシデントと NTSBにより

More and than 50%.

:50%以上

25%.

:25%

Less than 50%.

:50%未満

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q8  :  Which of the following incidents with a turbine aircraft requires immediate NTSB notification?

 

A  :  An engine fire that occurs on the ground.

B  :  Sustained loss of thrust in one engine of a large multiengine aircraft.

C  :  Compressor blade failure that penetrates the cowling but does not impact any other part of the aircraft.

 

 

Which of the following incidents

:次のインシデントのうち どれが

with a turbine aircraft requires immediate NTSB notification?

:タービン機で 必要とされる NTSB即刻通知

An engine fire that occurs on the ground.

:エンジン火災 地上で起こる

Sustained loss of thrust in one engine of a large multiengine aircraft.

:持続 推力の喪失 一つのエンジンの 大型多発機の

Compressor blade failure that penetrates the cowling

:コンプレッサーブレードの故障 突き破り カウリングを

but does not impact any other part of the aircraft.

:しかし、衝突しない 他の部分に 航空機の

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q9  :  Which situation is reportable to the NTSB if your aircraft is equipped with ACAS Airborne Collision and Avoidance system?

 

A  :  Operating on an instrument flight plan while needing to comply with a resolution advisory to avert a substantial risk between aircraft.

B  :  When operating VFR in class B airspace near the primary airport.

C  :  When operating VFR in uncontrolled airspace.

 

 

Which situation is reportable to the NTSB

:どのような状況が 通知義務がありますか NTSBに

if your aircraft is equipped with ACAS Airborne Collision and Avoidance system?

:もし、あなたの航空機に装備されている場合 ACAS空中衝突回避システムを

Operating on an instrument flight plan

:運航中 IFRフライトプランで

while needing to comply with a resolution advisory

:必要とする 応じることを 解決策勧告に

to avert a substantial risk between aircraft.

:避けるため 実際のリスクを 航空機の間の

When operating VFR in class B airspace near the primary airport.

:運航している時 VFRで クラスB空域内の主要空港付近を

When operating VFR in uncontrolled airspace.

:運航している時 VFRで 管制されていない空域を

自力で回答してから音声を聞いてください。

 

あとがき

はい。どうでしたか?

 

即時通知と報告書の提出が

必要なアクシデントと

インシデントとの違いを

整理して覚えて

筆記テストに備えてくださいね。

 

航空規則は理論・理屈は抜きで

暗記するしかありませんから

頑張ってください。

 

ということで、今回は以上となります。

今日も最後まで読んでいただいて

ありがとうございます!

ではまた!

 

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