[Cross-Country Planning : 野外飛行計画]
パイロット免許への水先案内人
須永です!
前回は、
True North (真北) と Magnetic North (磁北)
についてお話しさせていただきました。
仮に、
真北 (北極点) に向かって
飛行する場合、
機内の磁気コンパスの示す
360° に機首を向けても
真北には向かいません。
なぜなら、
磁気コンパスが指す北というのは
真北ではなく磁北だからです。
この2つの「北」の存在を
理解していただけましたか?
今回は、
Headings (機首方向) と Speeds (速度)
についてお話したいと思います。
コースと機首方向の相違
Variation (VAR) を考慮して
必要とされる Magnetic Course で
飛行する際に問題となるのは、
その Magnetic Course と
必要とされる Heading (機首方向) が
必ずしも一致しないということです。
Heading とは
機首が向いている方向のことです。
True Course に対するものであろうが、
Magnetic Course に対するものであろうが、
関係ありません。
単純に機首の鼻先が
向いている方向ということです。
HEADING
Direction the nose is pointed
HEADING
:機首方向
Direction the nose is pointed
:方向 鼻先(機首)が指している
なぜ、あなたの選択したコースと
Heading が一致しないのでしょう?
それは風の影響を受けるからなのです。
例えば、
あなたのプランが
真北に向かうコースだとします。
その時、西からの風が吹いています。
その風はあなたの機体を
コースから外す作用として働きます。
その作用に対抗して
計画したコースから外れないように
あなたは Crab を取る必要があるのです。
Crab とは、
翼を水平にしたまま
機首を風上側に向けて
飛行する方法です。
この時のコースに対する
Heading の修正角度を
Wind Correction Angle (偏流修正角)
といいます。
しばしば WAC と略されて使われることが
多いですからね。
WIND CORRECTION ANGLE (WCA)
Difference between course and heading
WIND CORRECTION ANGLE (WCA)
:偏流修正角
Difference between course and heading
:相違 コースと機首方向の
風向の表示
さて、風の状態を表すには
ご存知の通り風向風速が使われますね。
この時の風向は
常に真北を基準とした方位で
表示されます。
WIND
In true direction
WIND
:風
In true direction
:真北を基準とした方向
ただし、例外もあります。
それは離着陸時に使用される風向です。
離着陸時の風向は
磁北を基準とした
方位で提供されるのです。
なぜかというと、
Runway 上にペイントされた
ナンバー (Runwayの方向を示す)は
磁北を基準とした方位で
表記されているからなんです。
ですから、離着陸時に
タワーから提供される風向は
完全に磁北を基準としたものと
なっています。
それ以外の気象条件としての
風の情報は全て真北を基準にした
方位で示されています。
機首方向
Heading (機首方向) は
自分で選んだコースに沿って
飛行するために
風の条件を考慮して
左や右に必要な偏流修正角を加味した
機首が指す方向のことです。
HEADING
Course +(Right) or -(Left) Wind correction angle
HEADING
:機首方向
Course +(Right) or -(Left) Wind correction angle
:コース +又は-(右か左) 偏流修正角
Magnetic heading は
磁北を基準とする方位の下で
機首が指している方向のことです。
MAGNETIC HEADING (MH)
Direction the nose is pointed referenced to magnetic north
MAGNETIC HEADING (MH)
:機首磁方位
Direction the nose is pointed referenced to magnetic north
:方向 機首が指している 基準にして 磁北を
フライトプランを立てる際には
True heading (真北を基準にした機首方向) も
割り出すのですが、
実際は、Magnetic heading の方が
より便利で多用しています。
それは、
航空機の計器全てが
磁北を基準にした表示に
なっているからです。
特に方位の基準となる
磁気コンパスが指すのは磁北だからです。
それをいちいち
真北の方位に変換してなどとやっていては
間違いの元を増やすだけですからね。
磁気コンパスの誤差エラー
次に磁気コンパスについて
付け加えておくことがあります。
それは磁気コンパスの
Deviation (誤差エラー) です。
この誤差エラーは
地球の磁場の影響とは
全く関係のないもので、
個々の磁気コンパスによって
異なるエラーです。
というのは、
航空機には電源を必要とする
電子機器もたくさんあり、
それらを稼働するための
発電機も装備しています。
また大きなエンジンなどもありますので、
多少なりとも磁気コンパス周辺の磁場にも
影響が出てしまいます。
その誤差を Deviation といいます。
DEVIATION (DEV)
Error in the compass due to magnetic fields in the aircraft
DEVIATION (DEV)
:磁針の自差
Error in the compass due to magnetic fields in the aircraft
:誤差エラー コンパスの 磁場による 航空機内の
この DEV は航空機がどこを
飛行しているかは関係ありません。
場所ではなく
個々の航空機内に生じる
磁場の影響によるものなのです。
誤差エラーの修正法
さて、
磁気コンパス本体または近くに
Deviation カードというものが
ついているはずです。
これらの数値が何を
示しているのかというと、
本来向かうべき
Magnetic heading に対して
この磁気コンパスは各方向に
これだけの誤差があるということを
一覧にしています。
飛行中 Magnetic heading を
合わせる際は、
その磁気コンパスの DEV を加味して
Magnetic heading に
合わせていくことが必要となるのです。
例えば、
上段の左の黄色の枠内は
30の下に29とありますね。
これは、
「磁方位030°に機首を
合わせたいときは
このコンパスでは029°です」
という意味を表しています。
同じように
150°に向けたいなら 151°に
210°に向けたいなら 209°に
合わせなさいということです。
このコンパスでは
3方向で誤差が生じるんですね。
速度について
次に速度の話に移ります。
True Airspeed (TAS) 真対気速度とは、
その空気の中でどれくらいの速さで
進んでいるかを示す速度です。
TRUE AIRSPEED (TAS)
Speed of the aircraft through the air
TRUE AIRSPEED (TAS)
:真対気速度
Speed of the aircraft through the air
:速度 航空機の 通る 空気の中
これはあくまでも
空気中の速度であるということです。
もし、
飛行中のエリアに追い風が吹いていたなら
地面に対する移動速度は速くなり、
向かい風を受けているなら
地面に対しての移動速度は
遅くなりますよね。
この地面に対する速度のことを
Groundspeed (対地速度) といいます。
GROUNDSPEED (GS)
Speed of the aircraft over the ground
GROUNDSPEED (GS)
:対地速度
Speed of the aircraft over the ground
:速度 航空機の 地上に対しての
この対地速度が分かることで
到着予定時刻を求めることが
可能になるわけです。
真対気速度に風の成分を加味することで
対地速度が求められるということです。
まとめ
Headings (機首方向) と Speeds (速度)
Heading (機首方向)
◎機首が向いている方向
Magnetic Heading
◎磁北を基準にした機首方向
Course とHeading の不一致
◎横風を受けてコースから外れることを避けるため
風上側に機首を向けて飛行する
Wind Correction Angle (偏流修正角)
◎コースを外れないための修正角度
Wind direction (風向)
◎常に真北を基準にした方位で表示
例外
◎離着陸時のみ磁北を基準にした方位で提供される
Deviation (誤差エラー)
◎航空機内の磁場よるコンパス誤差エラー
◎コンパスカードの修正値を加味する
True Airspeed (TAS) 真対気速度
◎空気の中を通り抜ける速度
Groundspeed (対地速度)
◎地上に対しての速度
練習問題にトライしてみよう!
Q1 : Magnetic heading is
A : the number you want to see in the glass of the compass to fly where you want to go.
B : the direction the nose is pointed referenced to magnetic north.
C : the error in the compass due to magnetic fields in the aircraft.
Magnetic heading is
:機首磁方位は
the number you want to see in the glass of the compass
:番号(方位) あなたが見たい ガラス(窓)の中 コンパスの
to fly where you want to go.
:飛んでいきたい場所
the direction the nose is pointed referenced to magnetic north.
:方向 機首が指す 基準とする 磁北を
the error in the compass due to magnetic fields in the aircraft.
:誤差エラー コンパスの 磁場による 航空機内の
・
・
・
自力で回答してから音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q2 : True airspeed is
A : the speed of the wind over the ground.
B : the speed of the aircraft over the ground.
C : the speed of the aircraft through the air.
True airspeed is
:真対気速度は
the speed of the wind over the ground.
:速度 風の 地上の
the speed of the aircraft over the ground.
:速度 航空機の 地上に対する
the speed of the aircraft through the air.
:速度 航空機の 通り抜ける 空気の中を
・
・
・
自力で回答してから音声を聞いてください。
あとがき
はい。どうでしたか?
パイロットの知識として
不可欠な二つの「北」の存在。
一つは地理学的な北である北極点 (真北) と
もう一つの磁気コンパスが指す磁北が
存在しているということから始まり、
それらを考慮した上での
コースどり (機首の方向) が
必要であることがつかめてきましたか?
今後、
風の条件を踏まえて
到着予定時刻などを求める場合には、
これまでのことが
整理されていなければ
正しい答えを出せませんので、
ここはしっかりと
押さえておいてくださいね。
ベースになるところさえ
理解出来ていれば、
計算自体は簡単ですからね。
なぜなら、既にあなたは
無風状態の条件であれば、
到着予定時刻の求め方は
マスター出来ていますからね!
はい!
引き続き頑張っていきましょう。
ということで、今回は以上となります。
今日も最後まで読んでいただきまして
ありがとうございます!
ではまた!
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