[Flight Operations : 運航]
パイロット免許への水先案内人
須永です!
前回は、
Hypoxia (低酸素症) と
Hyperventilation (過呼吸) について
お話しさせていただきました。
車の運転とは違い
航空機は高い場所を移動するので
特殊な体の異変が起こる可能性があることと
もしも起こってしまっても冷静に対処できるように
知識を整理しておくことの大切さを
理解していただけましたか?
今回は、
Carbon Monoxide (一酸化炭素)
についてお話したいと思います。
飛行中、あなたの身体に影響を
及ぼす可能性のあるものの一つに
Carbon Monoxide Poisoning
(一酸化炭素中毒) があげられます。
CARBON MONOXIDE
Results in loss of muscular power
CARBON MONOXIDE
:一酸化炭素
Results in
:結果として生じる
loss of muscular power
:喪失 筋力の
例によって重要なフレーズを
赤で示したのですが、
プライベートパイロットの座学では
このようにサラッとした説明で
終わらせてしまっています。
ただ、実際には命にも関わる危険が
潜んでいますので、
もう少しだけ説明を
つけ加えさせていただきますね。
一酸化炭素中毒とは、
一酸化炭素 (CO) を吸って起こる中毒のことです。
一酸化炭素は酸素の約250倍も
血液中のヘモグロビン (Hb) と結びつきやすく
一酸化炭素ヘモグロビンを形成することで
血液が酸素を運ぶ能力を低下させてしまいます。
特に中枢神経や心筋などが障害を受けてしまいます。
ところが、一酸化炭素自体は
無色、無臭、無味のため
発生に気づきにくいというのが厄介な点です。
障害の程度は一酸化炭素の濃度と
吸っていた時間で決まります。
死亡に至る可能性も
考えらる危険なものですから
十分な警戒が必要となりますよ。
では、一体この一酸化炭素は
どこからやって来るのでしょうか?
実は、主な単発機の室内を温めるヒーター装置の
Heat Exchanger (熱交換器) の仕組みは
エンジンの排気ガスの熱を利用しているのです。
万が一亀裂などの破損によって
排気ガスが直接室内に
入り込んでしまう事態が生じた場合は
排気ガス中の一酸化炭素を
パイロットが吸い込んでしまう可能性があるのです。
人間の五感では発見できませんので
ほとんどの機体には
Carbon Monoxide Detector (一酸化炭素検出器) が
コックピットに取り付けられているのです。
元々計器盤に組み込まれているタイプや
ポータブルタイプも色々あります。
さて、一酸化炭素が体内に入ってしまうと
酸素を体中に運ぶ能力が低下してしまうんでしたね。
そのことを頭に置きながら考えてみましょう。
高い高度になればなるほど
酸素の濃度も低くなりますよね。
酸素が薄い中で、
さらに体内で酸素を運びにくくなる状態。
つまり、高い高度ほど身体は
一酸化炭素中毒にかかりやすくなってしまう
ということなんですね。
SUSCEPTIBILITY TO CARBON MONOXIDE POISONING
Increase as altitude increase
SUSCEPTIBILITY TO CARBON MONOXIDE POISONING
:かかりやすさ 一酸化炭素中毒に
Increase as altitude increase
:増大する 高度の増加ほど
もしも、コックピット内で
排気ガスの臭いに気づいたり
中毒の可能性に気づいたときには
直ちに換気が必要となります。
① Cabin Heater を OFF
(一酸化炭素の流入を可能な限り抑える)
② 換気 / 全ての Vent と Window を Open
③ できるだけ早く着陸
(脳の判断も鈍っている可能性も考えて、安全な範囲の中で高度を下げて、一刻も早く着陸をする)
<まとめ>
一酸化炭素の影響
血液中の酸素を運ぶ能力が低下
結果として筋力の喪失を生じる
※ 上記は筆記テストに限る表記です。
実際には、最悪死亡事故も起こり得る
重大なことと認識しておいてください。
一酸化炭素中毒
酸素が薄い上に体内で酸素を運びにくくなるため
高い高度ほどかかりやすくなる
対処法
① キャビン・ヒーターをオフ
② 換気
③ 直ぐに着陸
ということで、練習問題にトライしてみましょう!
・・・・・・・・・・・・・・・
Q1 : Large accumulations of carbon monoxide in the human body result in
A : tightness across the forehead.
B : loss of muscular power.
C : an increase sense of well-being.
Large accumulations of carbon monoxide
:大きな 蓄積 一酸化炭素の
in the human body
:人間の体内に
result in
:・・・という結果になる
tightness across the forehead.
:緊張 いたるところ 額
loss of muscular power.
:喪失 筋力の
an increase sense of well-being.
:増加 幸福感
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q2 : Susceptibility to carbon monoxide poisoning increase as
A : altitude increase.
B : altitude decrease.
C : air pressure increase.
Susceptibility to carbon monoxide poisoning
:かかりやすさ 一酸化炭素中毒に
increase as
:増大する ・・・と同様に
altitude increase.
:高度の増大
altitude decrease.
:高度の減少
air pressure increase.
:気圧の増大
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
はい。どうでしたか?
テストの内容的に言えば
そんなに難しいことは
無かったと思います。
しかし、
一酸化炭素中毒は本当に危険です。
雪道で立ち往生して
動けなくなった車が
暖を取るためにエンジンを
かけたまま過ごしていたら
雪が邪魔をして排気ガスが上手く
外に逃げなくなっていて
気がついたときには
痛ましい事故になっていたなんていう
ニュースを聞くこともありますよね。
一酸化炭素というのは
静かな殺し屋と呼ばれることもあります。
心しておきましょう。
あなたには真のセーフティパイロットに
なってもらいたいと思っています。
頑張ってください。
ということで、今回は以上となります。
今日も最後まで読んでいただいて
ありがとうございます!
ではまた!
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