滑走路マーキングについて

[Flight Operations : 運航]

パイロット免許への水先案内人

須永です!

 

 

前回は、

Taxiway Markings (誘導路マーキング) について

お話しさせていただきました。

 

誘導路から滑走路に入る際と

滑走路から出る際に通過する

Runway Hold Position Markings

(停止位置標識) の通過方法は

しっかりと整理して

覚えていただけましたか?

また、

Enhanced Taxiway Centerline や

車両専用通路のマーキングも

パッと見てすぐ意味も分かる状態に

しておきましょう。

 

 

 

今回は、

Runway Markings (滑走路マーキング)

についてお話したいと思います。

これからあなたが訪れる

様々な空港で目にするであろう

滑走路に施されたマーキングについて

見ていきましょう。

先ずは、滑走路にマーキングされた「✖」です。

これらの「✖」が表す意味は何でしょう?

それは、その滑走路が閉鎖されている

ということです。

ですから、あなたは

「✖」のマーキングのある滑走路には

着陸できません。

ところで、例に挙げた図では

閉鎖されている滑走路に

なぜ、滑走路ナンバーが

残っているのでしょうか?

閉鎖されているのであれば

紛らわしくなるので

滑走路ナンバーは必要ないのでは?

という声が聞こえてきそうですね。

安心してください。

ちゃんと意味があるのです。

その閉鎖が一時的なものである

いうことなのです。

例えば、照明器具の改修や

滑走路面の再舗装工事などが

挙げられます。

これらの作業が終了した後、

またその滑走路の使用が再開されるので

滑走路ナンバーはそのまま

残してあるということなんですね。

CLOSED RUNWAY

Temporary

CLOSED RUNWAY

:閉鎖滑走路

Temporary

:一時的

次に Threshold (滑走路末端標識) の手前に

マーキングされた「↑」についてです。

この「↑」の意味は

Displaced Threshold (移設滑走路末端標識)

と呼ばれるエリアです。

ファイナルアプローチコースに

障害物がある立地条件の

滑走路で多く見ることがあります。

滑走路の舗装面の末端を

目指して降りてくると

障害物に接触してしまう恐れがあるので

安全な高度を保つために

Threshold を少し奥側に設定する目的の

エリアと考えてください。

 

ですから着陸はできません

ただ、着陸に限ってのことですから

タキシングと離陸滑走はできる

ということを覚えておきましょう。

NO LANDING

Taxiing and takeoff only

NO LANDING

:着陸禁止

Taxiing and takeoff only

:タキシングとテイクオフだけ

さて、時々軍服の袖章のような

マーキングを見ることがあるかと思います。

この黄色の Chevron マーキングのエリアを

Emergency Overrun Area (過走帯)

といいます。

このエリアは通常運航中は

使用することはありませんし、

使用してはいけません

唯一使用が許されるのは

事故の時だけです。

過走帯の反対側からのアプローチで

接地点が大幅に前方にずれてしまったり、

ブレーキの故障等で通常の距離で停止できず

やむなくオーバーランしてしまう事態に備えて

舗装面を延長したエリアなんです。

舗装面を少しでも長く使えることで

より安全に停止することを目的としています。

くり返しになりますが、

オーバーラン以外で使うことはできません。

なぜなら接続している滑走路よりも

強度が弱いからです。

過走帯をタキシングすることや

増しては着陸することなど

想定していないためなんですね。

前述の Displaced Threshold は

強度もあり保守されているので

タキシングと離陸滑走に

使用することができるのです。

過走帯は緊急時用ということです。

 

今まで出てきたような

滑走路マーキングの形状は

コックピットから見ても

非常にわかりやすいものですね。

ただ、Cross Country Flight (野外飛行) で

馴染みのない空港へ飛行する場合、

事前にその空港の滑走路の情報があれば

心にもゆとりができますよね。

そんな時、役立つのが FAA が発行している

AIRPORT DIAGRAM (空港図) です。

ただし、実物と同じ表記になっていない個所も

多いので慣れることが必要ですよ。

では、具体的に中身を確認していきましょう。

まずは、エリア C です。

「✖」マーキングの滑走路ですね。

先程の説明を覚えていますか?

滑走路上に「✖」があり、

且つ滑走路ナンバーも残っているものは

一時的に閉鎖された滑走路ということでしたね。

ところが、エリア C のそれは

滑走路ナンバーが見て取れません。

あるのは「✖」だけですね。

この場合は、完全に閉鎖された滑走路

ということになります。

更に良く見てみると

使用できない決定的な理由があるのですが、

分かりますか?

舗装面が、ぶつ切り状態ですよね。

(三分割されています)

これだけで使用不可能ということが明白です。

ま、何はともあれ

「✖」マーキングのある滑走路は

利用できませんから注意してくださいね。

PERMANENTLY CLOSED RUNWAY

PERMANENTLY CLOSED RUNWAY

:永久に閉鎖された滑走路

 

続いてエリア B です。

楕円が3つ連なったマークが見えますか?

政府機関が発行している空港図において

このマークは Threshold (滑走路末端標識) を

示しています。

つまり、A ~ B 間の舗装面は

Displaced Threshold (移設滑走路末端標識)

ということになりますよ。

実際の滑走路では「↑」が

マーキングされているエリアになります。

ということは、A ~ B 間は

タキシングと離陸滑走はできますが、

着陸できない部分であると判断できますね。

このように空港図には、

「↑」は表記されませんので注意が必要ですよ。

次にエリア E です。

空港図では、滑走路は黒で色分けされてます。

ところが、E のようにグレーの帯が

延長されているのが見えますか?

この部分の意味はもう想像がつきますね。

そうです。

Emergency Overrun Area (過走帯) です。

実際の滑走路では

Chevron (袖章) のようなマーキングがある

エリアということです。

このエリアを使うことができるのは

緊急事態のときだけです。

例に示したランウェイ32の

使用可能な部分は

D 地点からということになりますよ。

以上が FAA 発行の公式の

Airport Diagram の特徴です。

 

 

さて、舗装面のマーキングで

もう一つ重要なものに触れておきましょう。

DEMARCATION BAR (境界線)

というものがあります。

黄色の実線でマーキングされています。

図 (左) は

Overrun Area と Displaced Threshold の

境界線となっています。

図 (右) は

Taxiway と Displaced Threshold の

境界線になっていますね。

いずれもこのラインが意味することは

「この先に Threshold があります」

と同時に

「Displaced Threshold はここからです」

ということを示すものです。

つまり、Demarcation Bar の地点から

タキシングと離陸滑走を行えるということです。

ただし、言うまでもなく

ランディングはできませんからね。

では、次に話を進めますよ。

下は2本の交差滑走路と

トラフィックパターン・インディケーター

及び風向指示器を示したものです。

 トラフィックパターン・インディケーターについては

後日詳しく触れたいと思います。

南北に伸びる滑走路の両端に

「↑」が見えますね。

このエリアを・・・

Displaced Threshold と呼びますよね。

しつこいですが、

Displaced Threshold には

着陸できません。

できるのは、

タキシングと離陸滑走だけです。

NO LANDING

Taxiing and Takeoff only

でしたね。

さて、この図を提示されて

問われるであろう問題としては

「図のような風が吹いている時、あなたはどの滑走路に着陸しますか?」です。

それでは、ウインド・インディケーターを

見てみましょう。

この Tetrahedron (四面体) は

常に風上を指しています。

ということは、この図では

南西から風が吹いて来ていることを

示していますね。

さて、質問は

「どの滑走路に着陸しますか?」

でしたね。

風だけのことを考えたら

Runway 22 に着陸することが

一番ベストだということは分かりますね。

でも、本当に Runway 22 に降りますか?

いやいや着陸することはできませんよね。

滑走路上に「✖」マーキングがありますからね。

本当に残念ですね。

なぜ?って

真っ直ぐ風に向かって

着陸できる方向だからです。

ですが、使えないのであれば

Runway 22 は忘れましょう。

次に候補になる Runway は、

どれでしょう?

南西の風に対して有効な Runway は

Runway 36 ですか?

Runway 18 ですか?

これまで学習してきたあなたには

簡単すぎる質問でしたね。

着陸すべき滑走路は

Runway 18 です。

なぜなら、飛行機は

Takeoff も Landing も

風に向かって行うのが基本です。

Runway 36 では

追い風になってしまいますからね。

ですので、この条件下で

着陸すべき滑走路は

Runway 18 であり、 

パイロットから見て

右前方からの Crosswind を受けながらの

Landing になるということですね。

<まとめ>

Runway Markings のあれこれ

Temporary Closed Runway

◎「✖」マーキングで表示

(滑走路ナンバーは残したまま)

Displaced Threshold

◎「↑」で表示

◎タキシングと離陸滑走はOK

◎着陸はできない

(障害物をクリアする高度を保つため)

Emergency Overrun Area

◎黄色の Chevron マーキングで表示

◎緊急事態のときのみ使用可

(着陸及び離陸滑走、タキシングもNG)

Airport Diagram

◎様々な空港で安全かつ正確に運航できるように

色々な情報が提供されている空港図

◎実際の滑走路にある「↑」や「⩓」の

表記はないので慣れが必要

Demarcation Bar

◎黄色い実線で表記

◎Overrun Area 及び Taxiway と

Displaced Threshold との境界線を表す

◎そのラインからタキシングと離陸滑走を

開始できる

はい。ということで、

練習問題にトライしてみましょう!

・・・・・・・・・・・・・・・

Q1  :  (Refer to figure)

According to the airport diagram, which statement is true ?

A  :  Runway 30 is equipped at position E with emergency arresting gear to provide a means of stopping military aircraft.

B  :  Takeoffs may be started at position A on runway 12, and the landing portion of this runway begins at position B.

C  :  The takeoff and landing portion of Runway 12 begins at position B.

注意)参照図はFAA発行の Airport Diagram ではありません。

見取り図としてとらえてください。

(Refer to figure)

:図を参照してください

According to the airport diagram,

:空港図によると

which statement is true ?

:どの記述が正しいですか?

Runway 30 is equipped at position E

:ランウェイ30 備えられている E地点に

with emergency arresting gear

:緊急停止支援設備が

to provide a means of stopping military aircraft.

:手段を提供するため ミリタリー機を停止する

Takeoffs may be started at position A on runway 12,

:離陸を始めてよい A地点から ランウェイ12の

and the landing portion of this runway begins at position B.

:且つ 着陸部分 滑走路の 始まる B地点から

The takeoff and landing portion of Runway 12 begins at position B.

:離陸と着陸部分 ランウェイ12の 始まる B地点から

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q2  :  (Refer to figure)

What is the difference between area A and area E on the airport depicted ?

A  :  “A” may be used for taxi and takeoff, “E” may be used only as an overrun.

B  :  “A” may be used for all operations except heavy aircraft landings, “E” may be used only as an overrun.

C  :  “A” may be used only for taxiing, “E” may be used for all operations except landings.

注意)参照図はFAA発行の Airport Diagram ではありません。

見取り図としてとらえてください。

(Refer to figure)

:図を参照してください

What is the difference between area A and area E

:何が違いますか? エリアA と エリアE

on the airport depicted ?

:描かれた空港上の

“A” may be used for taxi and takeoff,

:”A”は 使用されていい タクシーと離陸

“E” may be used only as an overrun.

:”E”は 使用されていい オーバーランのときだけ

“A” may be used for all operations except heavy aircraft landings,

:”A”は 使用されていい 全ての運航で 大型機の着陸を除いて

“E” may be used only as an overrun.

:”E”は 使用されていい オーバーランのときだけ

“A” may be used only for taxiing,

:”A”は 使用されていい タキシングのためだけ

“E” may be used for all operations except landings.

:”E”は 使用されていい 全ての運航で 着陸を除いて

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q3  :  (Refer to figure)

Area C on the airport depicted is classified as a

A  :  stabilized area.

B  :  multiple heliport.

C  :  closed runway.

注意)参照図はFAA発行の Airport Diagram ではありません。

見取り図としてとらえてください。

(Refer to figure)

:図を参照してください

Area C on the airport depicted

:エリアCは 描かれた空港上の

is classified as a

:分類されます ~として

stabilized area.

:強度の弱い過走帯

multiple heliport.

:複数のヘリポート

closed runway.

:閉鎖された滑走路

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q4  :  (Refer to figure)

If the wind is as shown by the landing direction indicator, the pilot should land on

A  :  Runway 18 and expect a crosswind from the right.

B  :  Runway 22 directly into the wind.

C  :  Runway 36 and expect a crosswind from the right.

(Refer to figure)

:図を参照してください

If the wind is as shown by the landing direction indicator,

:もし風が見ての通り ランディング・ディレクション・インディケーターによって示されたら

the pilot should land on

:パイロットは着陸すべきです ~に

Runway 18 and expect a crosswind from the right.

:ランウェイ18 且つ 予測する 横風 右からの

Runway 22 directly into the wind.

:ランウェイ22 真っ直ぐ風に向かって

Runway 36 and expect a crosswind from the right.

:ランウェイ36 且つ 予測する 横風 右からの

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q5  :  The “yellow demarcation bar” marking indicates

A  :  runway with a displaced threshold that precedes the runway.

B  :  a hold line from a taxiway to a runway.

C  :  the beginning of available runway for landing on the approach side.

The “yellow demarcation bar” marking indicates

:黄色い境界線のマーキングは示します

runway with a displaced threshold that precedes the runway.

:滑走路 手前に displaced thresholdがある

a hold line from a taxiway to a runway.

:停止線 誘導路から滑走路への

the beginning of available runway

:始まり 使用可能な 滑走路の

for landing on the approach side.

:着陸のため 進入側の

自力で回答してから

音声を聞いてください。

はい。どうでしたか?

今回は少し長くなってしまいましたね。

お疲れさまでした。

マーキングに関しては

覚えていただくしかありませんので

少しずつ覚えていってくださいね。

多少覚えることが多くてもまあ、

私の更新のペースも

ゆっくりですのでゆとりを持って

消化してしてくださっていると

信じています。

もし理解できない部分など

ありましたら

お気軽に質問してくださいね。

引き続き頑張っていきましょう。

ということで、今回は以上となります。

今日も最後まで読んでいただいて

ありがとうございます!

ではまた!

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