Air Mass (気団) の基礎

[Weather : 気象]

パイロット免許への水先案内人

須永です!

 

 

前回は、

Common Behavioral Traps (共通する行動の罠) について

お話しさせていただきました。

 

操縦をする上で

経験値が増えたことが

かえって落とし穴に陥ってしまうという

事例もあるということを

理解していただけましたか?

 

 

 

さて今回からは、

Weather (気象) のカテゴリーに

入っていきますよ。

第1回目の今日は

Air Mass (気団)

についてお話したいと思います。

航空気象を学んでいく上で

まず押さえておきたいのは

標準大気です。

ライト兄弟の有人飛行の成功の後

多くの国で飛行機が作られる時代に移ります。

すると研究・開発のために

それぞれの機体が持つ性能を

比較する必要性が生じてきたのです。

しかし、単純な測定データの見比べでは

性能の判断というのは難しかったんですね。

というのは、

空気の温度・圧力・密度などが

場所や時間によって大きく

変化してしまうためなんです。

そこで基準となる大気の状態として

制定されたものが標準大気です。

次のような決まりで成り立っていますよ。

◎完全な乾燥気体 (湿度0) であること

◎海面上における温度は 15°C / 59°F

◎海面上における気圧は 1013.2ヘクトパスカル

水銀柱で 29.92インチ (1気圧)

◎海面上における密度は 1立方メートル当たり 1.2250キログラム

◎温度低下率は 高度100メートル上昇でマイナス 0.65°C

(ただし、マイナス 56.5°Cまでで、それ以降は変化なし)

これらの基準を定めることにより

それぞれの高度での密度や音速も

計算式から割り出せるようになっています。

あくまでも仮想の大気状態ですので

実際の大気と合致することはありませんが

飛行機の性能を標準大気に換算して

表示することで

性能の比較が現実的となったのです。

中でも今日覚えて欲しいのは

◎海面上における温度は 15°C / 59°F

◎海面上における気圧は 1013.2ヘクトパスカル

水銀柱で 29.92インチ (1気圧)

この2項目です。

アメリカの温度は摂氏ではなく

華氏で表示しますので慣れましょうね。

海面上では

15°C または 59°F ですよ。

STANDARD TEMPERATURE FOR SEA LEVEL

15°C / 59°F

STANDARD TEMPERATURE FOR SEA LEVEL

:標準温度 海面上における

15°C / 59°F

:摂氏15度 / 華氏59度

次に気圧ですが、

海面上における気圧は

1013.2ヘクトパスカル または

水銀柱で 29.92インチ (1気圧) です。

注)下の図ではヘクトパスカルではなく旧来のミリバール表示になっていて、さらに小数点以下は切り捨てて約1013mbということでご理解ください。

航空機の高度計は

気圧を利用していることは

既にご存知の通りですよね。

毎日、大気圧に変化がなければ

問題はないのですが、

実際はそうではないですね。

大気の圧力は温度と同じように

時間と場所によって変化していきます。

そのためその時点での海面上の気圧を

高度計にセットすることで

海抜高度を表示させるように調整できるのです。

その際の規正値に使用されているのが

水銀柱のインチの値なんです。

ATC でアルティメーター・セッティングを

伝える場合は

「29.92」インチの小数点は言いません。

「2992」”Two Niner Niner Two”

”トゥー ナイナー ナイナー トゥー”

のように伝えるのです。

では、大気がこのように

安定せず常に変化しているのは

何によってもたらされているのでしょう?

太陽によって温められた空気は

上昇していきます。

やがて上空で冷やされた空気は

今度は下降を始めるのです。

このように対流の中での

熱交換 (Heat Exchange) によって

大気の状態が変化していくんですね。

太陽のエネルギーを同じように受けても

大陸と海洋とでは温度上昇に差があります。

その場その場で地球表面の加熱が

まちまちであるからこそ

温度・気圧・密度などが様々な状態に

変化していくということですね。

VARIATIONS IN ALTIMETER SETTINGS

caused by unequal heating

of the Earth’s surface

VARIATIONS IN ALTIMETER SETTINGS

:変化 アルティメーター・セッティングの

caused by unequal heating

:不均一加熱による

of the Earth’s surface

:地球表面の

さて、

高気圧と低気圧がある場合

高気圧から低気圧に向かって

空気が風として移動するわけです。

高層風 (地上から離れた上空の風) は下図のように

北半球では、高気圧から吹き出された風は

等圧線に沿うように時計回り

回っています。

逆に低気圧では等圧線に沿いながら

反時計回りの風が流れているのです。

これは、高気圧から低気圧に向かって

空気の塊がダイレクトに移動 (等圧線を直角に横切る)

しようとしたとき、

北半球では右向きのコリオリの力 (転向力ともいう) が働くため

空気の塊の移動方向は90°曲がって

等圧線に平行になるのです。

その風は地衡風と呼ばれます。

しかし、地上付近では

風と地表との間に摩擦が生じるため

風の方向は等圧線と平行にはならないのです。

DIFFERENCES IN DIRECTION

BETWEEN WINDS ALOFT AND ON THE GROUND

caused by friction between the wind and the surface

DIFFERENCES IN DIRECTION

:差 方向の

BETWEEN WINDS ALOFT AND ON THE GROUND

:の間 風 高層と地上

caused by friction between the wind and the surface

:による 摩擦 の間 風と地表

では次に

温度、水蒸気の性質がある高度において

一定であるような空気の塊を

Air Mass (気団) といいます。

気団は広い海洋や大陸の上で形成されます。

気団発源地は、大きく熱帯地方と

極地方の二つに分けられます。

さらに大陸性と海洋性の二つに

分けられるのです。

大陸性の気団が乾燥した空気であるのに対し、

海洋性の気団は多量の水蒸気を含んでいます。

下図は日本付近の気団です。

また、暖かくて軽い熱帯性の気団が、

冷たくて重い極地方の気団と遭遇する際は、

二つの気団は簡単には混合せず、

二つの気団の間に前線 (Front) を形成して

色々な天気現象を発生させることになるのです。

BOUNDARY BETWEEN TWO DIFFERENT AIR MASSES

Front

BOUNDARY BETWEEN TWO DIFFERENT AIR MASSES

:境界 二つの違う気団の間

Front

:前線

この前線を横切るとき

必ず遭遇することは

風向が変わるということです。

Wind shift (風の急変)

それから温度も変わりますよ。

もともと寒気団と暖気団の

境界が前線ですので、

簡単に想像ができると思います。

<まとめ>

標準大気

◎完全な乾燥気体 (湿度0) であること

◎海面上における温度は 15°C / 59°F

◎海面上における気圧は 1013.2ヘクトパスカル

水銀柱で 29.92インチ (1気圧)

◎海面上における密度は 1立方メートル当たり 1.2250キログラム

◎温度低下率は 高度100メートル上昇でマイナス 0.65°C

(ただし、マイナス 56.5°Cまでで、それ以降は変化なし)

熱交換 (Heat exchange)

◎全ての気象現象の起因となる

高度計規正が必要とされるのは

◎地球表面の不均一加熱による

高層風と地上風の風向の差

◎風と地表の間における摩擦による

気団 (Air Mass) 

◎温度、水蒸気の性質がある高度において一定であるような空気の塊

前線 (Front)

◎二つの違う性質の気団の境界

◎前線を通過すると風向・温度が変化

コリオリの力

コリオリの力と地衡風は少し説明不足の感がありますので、ウィキペディアから抜粋してつけ加えておきます。

地球は東向きに自転していますよね。

そのため、赤道付近のように低緯度から

北極付近の高緯度に向かって運動している物体には

東向きの力が働きます。

逆に、高緯度から低緯度に向かって

運動している物体には西向きの力が働きます。

言い方を変えると

北半球では右向き

南半球では左向きの力が働くとも言えるのです。

地衡風

上空で気圧の差があれば

気圧の高い方から低い方へ向かって

空気塊を動かそうとする力が働きます。

この力を気圧傾度力といいます。

等圧線が平行かつ気圧傾度力が一定ならば

空気塊が等圧線に対して直角に気圧の高い方から

低い方へ加速されます。

北半球では、その進行方向の右向きに

コリオリの力が働くのです。

コリオリの力は速度に比例して

大きくなるため空気塊は右に曲がりながら

速度を上げて最終的には

気圧傾度力とコリオリの力は

正反対の向きに釣り合います。

すると空気塊は加速されない

向きも変えない安定した風になるのです。

この風を地衡風といいます。

はい。では、

早速練習問題にトライしてみましょう!

・・・・・・・・・・・・・・・

Q1  :  Every physical process of weather is accompanied by or is the result of a

A  :  movement of air.

B  :  pressure differential.

C  :  heat exchange.

Every physical process of weather

:全ての現象 気象の

is accompanied by or is the result of a

:伴う または ~の結果による

movement of air.

:移動 空気の

pressure differential.

:気圧差

heat exchange.

:熱交換

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q2  :  What causes variations in altimeter settings between weather reporting points?

A  :  Unequal heating of the Earth’s surface.

B  :  Variation of terrain elevation.

C  :  Coriolis force.

What causes variations in altimeter settings

:何が 変化を引き起こすのか 高度計規正の

between weather reporting points?

:の間 気象報告地点

Unequal heating of the Earth’s surface.

:不均一加熱 地球表面の

Variation of terrain elevation.

:変化 地形高さの

Coriolis force.

:コリオリの力

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q3  :  What are the standard temperature and pressure values for sea level?

A  :  15°C and 29.92 inches Hg.

B  :  59°F and 1013.2 hPa.

C  :  59°F and 29.92 hPa.

What are

:何ですか

the standard temperature and pressure values

:標準大気の 温度と気圧の値

for sea level?

:海面上における

15°C and 29.92 inches Hg.

:摂氏15度 且つ 29.92インチ 水銀柱

59°C and 1013.2 hPa.

:摂氏59度 且つ 1013.2ヘクトパスカル

59°F and 29.92 hPa.

:華氏59度 且つ 29.92ヘクトパスカル

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q4  :  The wind at 5,000 feet AGL is southwesterly while the surface wind is southerly.  This difference in direction is primarily due to

A  :  stronger pressure gradient at higher altitudes.

B  :  friction between the wind and the surface.

C  :  stronger Coriolis force at the surface.

The wind at 5,000 feet AGL is southwesterly

:風 地上高度5,000フィートで 南西です

while the surface wind is southerly. 

:同時に 地上風 南風です

This difference in direction

:この違い 風向の

is primarily due to

:主に ~のためです

stronger pressure gradient at higher altitudes.

:強い気圧勾配 高高度での

friction between the wind and the surface.

:摩擦 風と地表の間の

stronger Coriolis force at the surface.

:強いコリオリの力 地表の

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q5  :  The boundary between two different air masses is referred to as a

A  :  frontolysis.

B  :  frontogenesis.

C  :  front.

The boundary between two different air masses

:境界線 2つの違う気団の間

is referred to as a

:~と呼ばれます

frontolysis.

:前線の衰弱

frontogenesis.

:前線の発達

front.

:前線

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q6  :  One of the most easily recognized discontinuities across a front is

A  :  a change in temperature.

B  :  an increase in cloud coverage.

C  :  an increase in relative humidity.

One of the most easily recognized discontinuities across a front 

:一番認識しやすい変化 前線通過をすることで

is

:は~です

a change in temperature.

:変化 温度の

an increase in cloud coverage.

:増加 雲の範囲の

an increase in relative humidity.

:増加 相対湿度の

自力で回答してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q7  :  One weather phenomenon which will always occur when flying across a front is a change in the

A  :  wind direction.

B  :  type of precipitation.

C  :  stability of the air mass.

One weather phenomenon which will always occur

:一つの気象現象 いつも起こります

when flying across a front

:飛行中 前線を通過するとき

is a change in the

:変わります ~が

wind direction.

:風向

type of precipitation.

:降水の種類

stability of the air mass.

:安定性 気団の

自力で回答してから

音声を聞いてください。

はい。どうでしたか?

今回から気象の分野に入ったわけですが、

今日は本当に入口ということで

ざっくりとした内容になりました。

今後少しずつ詳しくなっていきます。

ですが、あくまでもプライベートパイロットの

筆記テストに合格できる内容までを

カバーしていくつもりですので

さらに深く勉強したい方は

独自に学習を進めてください。

気象の知識は多く持ち過ぎても

邪魔になることはありませんからね。

では引き続き頑張っていきましょう。

今回は以上となります。

今日も最後まで読んでいただいて

ありがとうございます!

ではまた!

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