[Flight Operations : 運航]
パイロット免許への水先案内人
須永です!
前回は、
Overheating について
お話しさせていただきました。
エンジンの冷却には
オイルの果たす役割が大きいので
飛行前点検ではしっかりと
オイルレベルの確認をすることの
大切さなどなど
理解していただけましたか?
今回は、エンジンの
異常燃焼 について
お話したいと思います。
その前にレシプロ(ピストン)エンジンは
どのような動きをするのか?
運転免許をお持ちの方なら
ご存知のことと思いますが、
一応おさらしておきましょう。
一般的なエンジンは
4つの行程が行われますよね。
下の図はそれを表したものです。
1:吸入 (吸気) 行程
吸気する側のバルブが開いて混合気を吸入します。
2:圧縮行程
バルブが閉まりピストンが上昇して圧縮する。
3:燃焼 (膨張) 行程
圧縮し終わったところで点火する。
燃焼によってガスが膨張する。
その膨張がピストンを押し下げる。
4:排気行程
排気バルブが開いて燃焼ガスを排出する。
上記の4つの行程が規則正しく
正しいタイミングで動いている状態を
通常の燃焼といいます。
これに対して
Detonation (デトネーション) や
Pre-Ignition (早期点火) という状態を
異常燃焼といいます。
では、デトネーションとは
どういうものなのでしょうか?
通常、スパーク・プラグによって
点火された混合気は
点火個所から燃焼を始めて
燃え広がるわけです。
一瞬のことではありますが、
燃焼はスパーク・プラグに
近い部分からスタートして
離れた部分まで順序よく伝わっていくのです。
これに対して点火後、燃焼ガスに押されて
未燃焼の部分が高圧高温になり
火炎面が到達する前
発火してしまう場合があります。
これが原因で
音速を超える火炎伝播速度で
燃焼を開始してしまう
異常燃焼現象のことを
デトネーションといいます。
DETONATION
Unburned charge in cylinder
explodes instead of burning normally
DETONATION
:デトネーション
Unburned charge in cylinder
:未燃焼の部分(混合気の) シリンダー内の
explodes instead of burning normally
:爆発する 通常燃焼の代わりに
どんな影響があるのでしょうか?
・ノッキングを起こす
・ピストンヘッドが溶ける
・シリンダーが溶ける
などが考えられ、いずれもエンジンに
大きなダメージを与えてしまいます。
ノッキングが起きた場合は
エンジンを冷却することが有効です。
なので離陸上昇中であればノーズをやや下げて
対気速度を増加してあげましょう。
また燃料のオクタン価を上げることで
ノッキングを一時的に抑えることができます。
DETONATION DURING CLIMBOUT
Lower the nose slightly
to increase airspeed
DETONATION DURING CLIMBOUT
:デトネーション 離陸上昇中
Lower the nose slightly
:低め 機首 わずかに
to increase airspeed
:増加するため 対気速度
もう一つの異常燃焼である
プレイグニッションとは・・・
圧縮熱に耐えられず
スパーク・プラグから点火するより
早めに燃焼 (爆発) してしまう現象です。
点火タイミングが早いのでエンジンの
上下運動がおかしくなり
スパーク・プラグからも点火しますので
火種が2つになり爆発速度も
2倍になってしまいます。
PRE-IGNITION
Uncontrolled firing of the fuel/air mixture
in advance of normal spark ignition
PRE-IGNITION
:プレイグニッション(早期点火)
Uncontrolled firing of the fuel/air mixture
:制御不能の点火 混合気の
in advance of normal spark ignition
:~より前 通常点火
共通の症状としては
デトネーションもプレイグニッションも
スパーク・プラグ以外の火種により起こされます。
燃焼 (爆発) の際に音波が発生して
シリンダー内の壁やピストンに衝突するわけですね。
この衝突によって
「キンキン」「カタカタ」と
金属をハンマーで叩いたような音がするので
2つの症状に気づくためには
こういった異音を聞き取る必要があるんです。
<まとめ>
レシプロ(ピストン)エンジンの異常燃焼には
Detonation (デトネーション) と
Pre-Ignition (プレイグニッション/早期点火) の2つがある
・Detonation (デトネーション)
シリンダー内の未燃焼の部分の爆発
・Pre-Ignition (プレイグニッション/早期点火)
スパーク・プラグの点火前の発火
ともに異音によって発生を気づけるが
エンジンの冷却が有効である
離陸後の急上昇中に異常に気づいた場合の対処
ノーズ(機首)をやや下げて対気速度を増加する
はい。ということで、練習問題にトライしてみましょう!
・・・・・・・・・・・・・・・
Q1: Detonation occurs in a reciprocating aircraft engine when
A : the spark plugs are fouled or shorted out or the wiring is defective.
B : hot spots in the combustion chamber ignite the fuel/air mixture in advance of normal ignition.
C : the unburned charge in the cylinders explodes instead of burning normally.
Detonation occurs
:デトネーション 発生する
in a reciprocating aircraft engine
:レシプロ機のエンジンで
when
:~のとき
the spark plugs are fouled or shorted out or the wiring is defective
:スパーク・プラグがすすで汚れたり、ショートしたり、配線に欠陥がある
hot spots in the combustion chamber
:燃焼室内の特定部
ignite the fuel/air mixture
:発火させる 混合気
in advance of normal ignition
:通常点火前に
the unburned charge in the cylinders
:未燃焼の部分(混合気の) シリンダー内の
explodes instead of burning normally
:爆発する 通常燃焼の代わりに
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q2 : If a pilot suspects that the engine (with a fixed-pitch propeller) is detonating during climb-out after takeoff, the initial corrective action to take would be to
A : lean the mixture.
B : lower the nose slightly to increase airspeed.
C : apply carburetor heat.
If a pilot suspects
:もしパイロットが疑いを感じたら
that the engine (with a fixed-pitch propeller) is detonating
:固定プロペラ搭載のエンジンがデトネーションしている
during climb-out after takeoff,
:離陸後 急上昇中
the initial corrective action
:最初の矯正行動は
to take would be to
:~することだ
lean the mixture
:混合気を薄くする
lower the nose slightly to increase airspeed
:機首をわずかに低くする
to increase airspeed
:対気速度を増加するため
apply carburetor heat
:キャブレター・ヒートをつける
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q3 : The uncontrolled firing of the fuel/air charge in advance of normal spark ignition is known as
A : combustion.
B : pre-ignition.
C : detonation.
The uncontrolled firing
:制御不能な点火
of the fuel/air charge
:混合気の
in advance of normal spark ignition
:通常点火の前
is known as
:として知られている
combustion
:燃焼
pre-ignition
:プレイグニッション
detonation
:デトネーション
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
はい。どうでしたか?
しっかりと整備されている機体であれば、
デトネーションやプレイグニッションも
起こることはないと思います。
私もレシプロエンジンの飛行機とヘリコプターで
合わせて約450時間飛んでいますが、
幸いなことに異常燃焼を経験したことはありません。
ただ万が一の時に備えて
このような知識を筆記テストでは
問われるのだと思います。
私のブログを読んで
内容を理解していただくだけで
筆記テストは合格できる内容に
なっていますので
一歩一歩ついてきてくださいね。
ということで、今回は以上となります。
今日も最後まで読んでいただいて
ありがとうございます!
ではまた!
コメント
ノーズを下げて対気速度を上げると、エンジンが冷却されるのはなぜでしょうか?
ばっさー様
ご質問ありがとうございます。
多くの小型機は、空冷式でエンジンを冷却しています。
エンジン前方のカウリングから空気を取り込んで
エンジンを冷却します。
離陸上昇中にノッキングが発生した場合
ノーズを下げて対気速度を上げてあげることで
より多くより速い流れの空気を取り込めるようになります。
空気の取り込み量が増える分、冷却効果が増すということです。
その時の高度にもよりますが、
もし安全な高度が確保されているならば
ノーズを下げてエンジンをアイドリングにするのが
一番冷却効果が大きくなります。
あくまでも応急処置です。
エンジントラブルですから飛行続行は諦めて
速やかに出発空港に引き返しましょう。
場合によっては不時着も視野に入れての
判断も迫られます。
冷静に対処したいものですね。
以上です。
納得いただけましたか?
ご不明な点がございましたら
またご連絡ください。
引継ぎ頑張ってください。
応援しています。