[Flight Operations : 運航]
パイロット免許への水先案内人
須永です!
前回は、
レシプロ(ピストン)エンジンの
異常燃焼について
お話しさせていただきました。
スパーク・プラグ以外の火種によって
点火が発生する異常燃焼の種類と対処法は
理解していただけましたか?
今回は、エンジンの
エンジンアウトの緊急事態 について
お話したいと思います。
さあ、あなたは今、目的地に向けて
スロットル全開で離陸滑走を始めました。
離陸速度に達したことを確認し
操縦桿を手前に引くと機首が上がり
機体がふわりと浮き上がります。
いつもの手順で上昇。
見る見る地上が離れていきます。
次の瞬間、
今まで順調に唸りをあげていたエンジンが
突然止まってしまいました!
今、あなたが行うべき操作は何でしょう?
それは・・・
直ちに適正な滑空姿勢と滑空対気速度を
確立させることです。
これは、あなたが機体を
コントロールし続けることができる状態を
確保するためなのです。
エンジンがアウトになったからと言って
すぐに地面に向かって真っ逆さという風には
なりませんので安心してください。
グライダーのように気流に乗って
上昇するようなことは出来ませんが、
適切な操作によって安全に滑空しながら
降りてくることは出来るのです。
ただ、それを可能にするために
機種ごとにそれぞれ設定された
滑空速度がありますので
まず、この速度にしてあげることが
何よりも大事となるわけなんですね。
POWER FAILURE
Immediately establish
the proper gliding attitude and airspeed
POWER FAILURE
:出力 停止
Immediately establish
:直ちに 確立する
the proper gliding attitude and airspeed
:適正な滑空姿勢と滑空対気速度
この時、風の方向やどこに降りようなど
考える必要はありません。
そんなことをしている間に
失速でもしてしまったら大変です。
木の葉のように
地面に向かってしまうかも知れないのです。
とにかく一番大事なことは
適切な滑空姿勢と滑空対気速度の確保です!
この2つを確保した後で初めて
風や着陸場所はどこにしようかと
考えればいいのです。
さて、滑空して届く距離に
空港があればラッキーですが、
アクシデントというのは
こちらの都合には合わせてくれませんよね。
なのでこのようなケースでは
空港以外の場所への緊急着陸を
強いられることがほとんどだと思います。
限られた時間内にできるだけ
地上の人や物に損害を与えない場所を
選ぶ必要があるわけなんですね。
時間に余裕があれば、
地上の煙や砂ぼこりなどの流れ
または出発地点で得た風向風速の情報を基に
風向を把握しておきたいです。
どこに降りるとしても
理想は通常のように
向かい風 (Headwind) で着陸させたいからです。
というのは、
色々と注意しなければならないことが
増えてしまうからなんです。
もし、追い風 (Downwind) で
着陸を強いられる場合は
まず、接地するポイントでの
対地速度が速くなります。
当然ですよね。
風に押されているわけですから。
この対地速度が速いということは
接地後の停止するまでの距離が
長くなってしまうんですね。
また、ファイナルの段階で
接地ポイントは「あそこだ!」と
目標に設定しても
ポイントを通り過ぎてしまうことも
考えられるわけです。
EMERGENCY REQUIRES
DOWNWIND LANDING
Faster ground speed
Longer ground roll
Overshooting your desired touchdown point
EMERGENCY REQUIRES
:緊急事態 必要とする
DOWNWIND LANDING
:追い風着陸
Faster ground speed
:より速い対地速度
Longer ground roll
:より長い 接地後の停止するまでの距離
Overshooting your desired touchdown point
:行き過ぎ あなたが望んだ接地ポイント
下の図はノーマル・アプローチにおいて
矢印の先端が滑走路上の
もしくは緊急着陸に選んだ場所の
接地ポイントを表しています。
もし、
後方からの風を受けている
状況であるとすると
いつもと同じピッチ角と
いつもと同じ降下角をキープしていたとしても
風に押されて意図した接地ポイントが
先の方にずれてしまうんですね。
加えて対地速度が早いわけですから
完全に停止するまでの距離が
長くなってしまうということは
理解できたのではないでしょうか。
さて、双発機であれば、
仮に片方のエンジンがアウトに
なってしまったとしても
飛行を続行することは可能です。
ですが、単発機のエンジンが
止まってしまった場合重要なことは
くり返しになりますが、
速やかに滑空速度にすることです。
そして一度合わせた滑空速度を
一定に保つということなんです。
なぜなら滑空速度が
上がったり下がったりと
不安定な状態ですと
その位置から地上のどの地点まで
滑空していけるのかという
距離を予測することが
とても難しくなってしまうためなんです。
VARIATION IN GLIDE SPEED
Nullify accuracy for gliding distance and landing spot
VARIATION IN GLIDE SPEED
:変化 滑空速度の
Nullify accuracy
:無効にする 正確さ
for gliding distance and landing spot
:滑空距離と着陸地点にむけての
実際の飛行中このような場面に
遭遇したくはありませんよね。
私もリアルでは経験してはいません。
しかし、訓練期間中は
数え切れないくらいの
ロストパワーの疑似訓練を
させられましたね。
何の前触れもなく
インストラクターが
「Engine failure !」と叫びながら
スロットルをアイドリングまで
下げてしまうんですよ。
で、すかさず滑空速度をキープしながら
風を読んで緊急着陸できる場所を探して
そこを目指して降下していくわけです。
接地直前でスロットル全開にして
リカバリー操作をするんです。
身体が勝手に反応するくらいになるまで
くり返しくり返しやったことを覚えていますよ。
命にかかわることなので当然と言えば
当然ですけどね。
うん。懐かしいです。
<まとめ>
エンジン停止の緊急事態発生時
直ちにやるべきこと
・適切な滑空姿勢と対気速度を確保
追い風での緊急着陸の注意点
・対地速度が速くなる
・接地後から停止するまでの距離が長くなる
・狙った接地地点を通り過ぎてしまう
一定の滑空速度を維持する目的
・滑空できる距離と接地地点を
できるだけ正確に予測・判断するため
では、今回の練習問題にトライしてみましょう!
・・・・・・・・・・・・・・・
Q1 : The most important rule to remember in the event of a power failure after becoming airborne is to
A : immediately establish the proper gliding attitude and airspeed.
B : quickly check the fuel supply for possible fuel exhaustion.
C : determine the wind direction to plan for the forced landing.
The most important rule to remember
:一番大切なルール 覚えておかなければならない
in the event of a power failure
:出来事で 動力の故障
after becoming airborne
:離陸後
is to
:~すること
immediately establish
:直ちに確立する
the proper gliding attitude and airspeed
:適切な滑空姿勢と対気速度
quickly check the fuel supply
:早く確認する 燃料の供給
for possible fuel exhaustion
:可能か 燃料消費
determine the wind direction
:判断する 風向
to plan for the forced landing
:計画のため 不時着に向けて
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q2 : If an emergency situation requires a downwind landing, pilot should expect a faster
A : airspeed at touchdown, longer ground roll, and better control throughout the landing roll.
B : groundspeed at touchdown, a longer ground roll, and the likelihood of overshooting the desired touchdown point.
C : groundspeed at touchdown, a shorter ground roll, and the likelihood of undershooting the desired touchdown point.
If an emergency situation requires a downwind landing,
:もし緊急事態により 必要となる 追い風着陸すること
pilot should expect a faster
:パイロット 予測すべき 速い~を
airspeed at touchdown,
:対気速度 接地地点の
a longer ground roll,
:より長い接地後から停止までの距離
and better control throughout the landing roll
:そして コントロールしやすい 終始 接地後から停止まで
groundspeed at touchdown,
:対地速度 接地地点の
a longer ground roll,
:より長い接地後から停止までの距離
and the likelihood of overshooting
:そして 可能性 行き過ぎる
the desired touchdown point
:意図した接地点より
groundspeed at touchdown,
:対地速度 接地地点の
a shorter ground roll,
:より短い接地後から停止までの距離
and the likelihood of undershooting
:そして 可能性 手前に着陸する
the desired touchdown point
:意図した接地点より
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・
Q3 : When executing an emergency approach to land in single-engine airplane, it is important to maintain a constant glide speed because variations in glide speed
A : increase the chances of shock cooling the engine.
B : assure the proper descent angle is maintained until entering the flare.
C : nullify all attempts at accuracy in judgment of gliding distance and landing spot.
When executing an emergency approach to land
:実行中 緊急進入 着陸のため
in single-engine airplane,
:単発機で
it is important to maintain a constant glide speed
:重要です 維持すること 一定の滑空速度
because variations in glide speed
:なぜなら 滑空速度の変化は
increase the chances of shock cooling the engine
:増える チャンスが 衝撃冷却する エンジンを
assure the proper descent angle is maintained
:保証する 適切な降下角が維持されること
until entering the flare
:入るまで 機体の引き起こしに
nullify all attempts at accuracy
:無効にする 全ての試みの 正確さ
in judgment of gliding distance and landing spot
:判断 滑空距離と接地点の
・
・
・
自力で答えを導き出してから
音声を聞いてください。
はい。どうでしたか?
できることなら緊急着陸などいう事態には
遭遇したくはありませんよね。
ですが、何事も絶対ということはありません。
万が一の時にも慌てることなく
冷静に対処できるように
あなたの隣に座るインストラクターさんに
しっかりと鍛えてもらってくださいね。
ということで、今回は以上となります。
今日も最後まで読んでいただいて
ありがとうございます!
ではまた!
コメント
問題の音声が前回の音声と同じになっているのですがこちらの異常でしょうか。
takumi様
ご指摘ありがとうございます。
確認したところ完全にこちらのミスでした。
先程訂正しました。
大変失礼いたしました。
しっかりと音声まで聞いてくださっていることに感謝です。
頑張ってくださいね。
また何かありましたら遠慮なくご連絡ください。