点火システム(マグネトー/Magneto)について

Flight Operations

[Flight Operations : 運航]

 

パイロット免許への水先案内人

須永です!

 

 

前回は、

筆記テストで問われるであろう

プリフライト・チェック時の注意点として

燃料に水が混入しているかどうかの確認と

水の混入の原因と対策法について

お話しさせていただきました。

 

その辺は、きっちりと覚えていただけましたか?

 

 

今回は、

エンジンの点火システムについての

お話となります。

 

冒頭の画像にありますが、

昔の飛行機は、あんな感じに

人の手によってプロペラを回して

エンジンを始動していました。

 

あなたも何かしらの映像や画像で

見たことがあるのではないでしょうか?

 

現在の飛行機であっても

もしも、バッテリーがアウトになり

スターターが動かなくなってしまった場合に

どうしてもエンジン始動が必要だというときは

実は、プロペラを手で回してあげることで

エンジンを始動させることが出来るんです。

 

この場合、絶対に注意しなければならないことは

コックピット内で操作する人は当然ですが、

プロペラを回す人もパイロットもしくは

整備士の資格保持者であることが必要なんです。

 

航空機のエンジンのシステムを理解していない人が

操作に加わることで起きてしまう事故というのは

あってはならないのです。

 

 

さて、エンジンスタート後

まず、チェックしなければならないことは

エンジンの適切な回転数 (RPM) の維持です。

次に、各種エンジン関係のゲージに

目を通していくわけですが、

特にオイルプレッシャー (油圧計) の針が

適切な範囲内 (グリーンの帯) に

収まっていることを確認してくださいね。

十分なオイルプレッシャーのないままで

エンジンを回してしまうと

エンジンに致命的なダメージを

与えてしまうことになりますからね。

 

 

では、今回の本題の

点火システム (Ignition System) について

話を進めていきますよ。

 

飛行機の点火システム (Ignition System) は

二重点火システム (Dual Ignition System)

採用しています。

 

これには、二つの理由があります。

 

一つは、安全のためです。

 

それぞれが独立をしているので、

もしも一方が故障しても

残ったもう一つのシステムで正常に

エンジンは運転を続けることができるのです。

 

もう一つの理由は、

燃焼効率が良くなると点です。

 

一つのシリンダーに2個の

スパーク・プラグを設けることで

より高いパワーを得ることが出来るのです。

 

これらのスパーク・プラグは

車のようにバッテリーの電源を必要としていません。

 

回転する永久磁石を使用している

マグネトー (Magneto) と呼ばれる装置が

バッテリーの代役をしているのです。

 

エンジンの回転に連動して永久磁石が回転する仕組みで

電気を発生するのです。

これによって、点火系は完全に

飛行機のその他の電気系統から独立しているので

他の電気系統が故障しても

エンジンの運転を維持することが出来るんですね。

 

くり返しになりますが、

マグネトー (Magneto) は、

独立した2個 (Left Magneto・Right Magneto) が設置されていて

それぞれ分離された配線とスパーク・プラグで

二重点火システム (Dual Ignition System) を

構成しています。

マグネトー (Magneto) は、コックピット内の

イグニッション・スイッチ (Ignition Switch) により

操作することができます。

 

左から OFF・R(Right)・L(Left)・BOTH・START

という配置になっていますよ。

 

R または L を選択すると

選択したマグネトー (Magneto) だけが作動します。

 

BOTH を選択した場合にのみ両方のマグネトーで

作動するようになっているんですね。

 

離陸前点検で BOTH から R(Right)

または BOTH から L(Left) に切り替えた際、

エンジンの回転数 (RPM) が少し低下します。

 

許容範囲の低下であれば、正常な現象です。

 

片方にしたら許容範囲を

超えてしまう低下であったりエンジンの停止、

逆に全く回転数が下がらない場合は正常ではありません。

 

必要な整備がなされるまで

飛行することは出来ませんよ。

 

 

話を進めていきますね。

 

このマグネトー (Magneto) と

イグニッション・スイッチは

グランド・ワイヤーで繋がっているんですが、

日本語で言ったらアースと思っていいと思います。

 

マグネトーで発生した電気を

スパーク・プラグに送るのではなく機体自体に

流してしまうためのものなんですね。

 

このことをグランディング (grounding)といいます。

 

 

イグニッション・スイッチを OFF にしてあげると

スパーク・プラグは点火しなくなるので

エンジンは停止する仕組みとなっています。

 

万が一、このグランド・ワイヤーが

切断されてしまった場合には、

イグニッション・スイッチを

OFF ポジションにしてもエンジンは

運転し続けるのです。

 

これはスパーク・プラグに電気が

流れ続けるためなんですね。

 

他の電気系統から点火システムが

完全に独立している証であるわけです。

 

安全のための仕組みではあるのですが、

同時に危険な状況も起こり得ることが

ありますので覚えてくださいね。

 

何らかの理由で

マグネトーとイグニッション・スイッチを繋ぐ

グランド・ワイヤーが切断してしまったと仮定しましょう。

 

そのことにあなたは、まだ気づいていません。

 

イグニッション・スイッチ

OFF になっているからといって

不用意にプロペラを回すことが

どれほど危険かということなのです。

エンジンの回転に連動して

マグネトーも回転しますので

当然プロペラを回してもマグネトーは

電気を発生することになります。

 

グランド・ワイヤーが切断されていたら

スパーク・プラグに電気が流れるので

点火するわけですね。

 

この時、もしシリンダー内に燃料が残っていたら

エンジンは躊躇せず動き出してしまうことでしょう。

事故的なエンジンスタートに

巻き込まれないように

注意をしてくださいね。

 

 

次に、

補助燃料ポンプ (Auxiliary Electric Fuel Pump)

について少し触れておきましょう。

 

たくさんの機体には補助燃料ポンプが

取り付けられています。

これは、エンジン・ドリヴン・ポンプの

バックアップ用にあるんです。

 

エンジン・ドリヴン・ポンプが故障のときは

当然使うわけなんですけども

ほとんどの機体は、エンジンスタート時に

使用されています。

 

また、多くの機体は離陸時と着陸時に

補助燃料ポンプのスイッチを ON にしています。

 

ただし、フライト中常に

使用されるようには設計されていません。

 

というのは、電力の消費が激しいので

本当に必要になった場合に使えないと

困ってしまいますので

あくまでもエンジン・ドリヴン・ポンプの

バックアップ的な位置にあると

認識していてください。

 

 

さて、フライト中に

電気系統がアウトになってしまったとしたら

どんなことが予想されるでしょうか?

 

バッテリーも交流発電機も

アウトというケースですよ。

 

この場合、電気で作動している

たくさんのゲージは

全て 0 を指すことになります。

このままでは、

エンジンも停止してしまいますか?

 

 

いいえ。

エンジン・ドリヴン・ポンプも

マグネトーシステムも独立しているので

エンジンは運転し続けてくれるのです。

 

しかしながら、電子機器は全て

動いてはくれません。

 

ナビゲーション計器もトランスポンダーもですよ。

 

無線機も使えなくなります。

そこで、あなたはそれらの便利な機器なしで

着陸するプランを立てなくてはいけません。

 

ランディング・ライトも点灯できません。

 

もしも、電動のフラップを装備した機体なら

フラップなしで着陸しなくてはいけないのです。

 

望ましいのは、現場から一番近い

交通量の少ないノンタワー空港への着陸です。

 

エンジンは生きているのですから

慌てることはありません。

 

自分の技量と知識を信じて

冷静に対処してくださいね。

 

 

 

<まとめ>

エンジン始動後の確認

適切な RPMオイルプレッシャー

 

飛行機の点火システムは

二重点火システムを採用している

 

理由1:安全のため

一つが故障でも残りの一つで飛行可能

 

理由2:燃焼効率が良い

一つのシリンダーに2個のスパーク・プラグ使用で

高い出力が出せる

 

マグネトー

永久磁石の回転運動によって電気を発生

2個の独立したマグネトーで構成

バッテリー電源の電気系統から完全独立

 

グランディング

マグネトーによって発生した電気を

スパーク・プラグに送らず

機体自体に逃がしてやること

 

補助燃料ポンプ

エンジン・ドリヴン・ポンプのバックアップ

 

 

 

なかなかのボリュームある内容でしたが、

練習問題にトライしてみましょう!

・・・・・・・・・・・・・・・

Q1  :  One purpose of the dual ignition system on an aircraft engine is to provide for

 

A  :  improved engine performance.

B  :  uniform heat distribution.

C  :  balanced cylinder head pressure.

 

One purpose

:理由の一つ

of the dual ignition system on an aircraft engine

:航空機エンジンの二重点火システムの

is to provide for

:~を供給するため

improved engine performance

:エンジン性能の向上

uniform heat distribution

:均一な熱の配分

balanced cylinder head pressure

:釣り合いのとれたシリンダーヘッドの圧力

自力で答えを導き出してから

音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q2  :  What should be the first action after starting an aircraft engine ?

 

 

A  :  Adjust for proper RPM and check for desired indications on the engine gauges.

 

B  :  Place the magneto or ignition switch momentarily in the OFF position to check for proper grounding.

 

C  :  Test each brake and the parking brake.

 

 

What should be the first action

:何 最初にとるべき行動

after starting an aircraft engine 

:航空機エンジン始動後

Adjust for proper RPM and

:適切な回転数への調整と

check for desired indications on the engine gauges

:確認 求められる表示 エンジン・ゲージ

Place the magneto or

:マグネトーの位置や

ignition switch momentarily in the OFF position

:イグニッション・スイッチ 瞬間的に OFFポジション

to check for proper grounding

:確認するため 適切な グランディング

Test each brake and the parking brake

:テスト それぞれのブレーキとパーキングブレーキ

自力で答えを導き出してから

音声を聞いてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

Q3  :  If the ground wire between the magneto and the ignition switch becomes disconnected, the engine

 

A  :  will not operate on one magneto.

B  :  cannot be started with the ON position.

C  :  could accidentally start if the propeller is moved with fuel in the cylinder.

 

 

If the ground wire between the magneto and the ignition switch becomes disconnected,

:もし グランド・ワイヤー マグネトーとイグニッション・スイッチの間 切れたら

the engine

:エンジンは

will not operate on one magneto

:一つのマグネトーは可動しないだろう

cannot be started with the ON position

:始動できない ONポジションで

could accidentally start

:事故的に始動するかも知れない

if the propeller is moved with fuel in the cylinder

:もしプロペラが動かされる シリンダーに燃料がある状態で

自力で答えを導き出してから

音声を聞いてください。

 

はい。どうでしたか?

覚えることもたくさんありましたね。

 

一気に理解することは難しいと思いますので

何度も記事を読み返してください。

 

コツコツやっていけば必ず

身についてきます。

 

空を飛ぶという夢を叶えるために

一歩ずつ前進していきましょうね。

 

分からないところがあれば

本当に気軽に質問をしてくだい。

 

今後も全力であなたの応援をしていきますので

よろしくお願いします。

 

ということで、今回は以上となります。

今日も最後まで読んでいただいて

ありがとうございます。

ではまた!

 

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