キャブレター・アイシングとは・・・?

[Flight Operations : 運航]

パイロット免許への水先案内人

須永です!

前回は、

Mixture について

お話しさせていただきました。

 

エンジンに送られる燃料と空気の

混合気には適正な割合があります。

高度の変化(空気密度の変化)によって

その割合が崩れて燃料が

濃い状態 (リッチ) になったり

薄い状態 (リッチ) になるのです。

そうなるとエンジンパフォーマンスは

落ちてしまいます。

それを防ぐために

Mixture で燃料の供給量を

調整してあげることが

必要なんだということは

理解していただけましたか?

 

今回は、

Induction Icing について

お話したいと思います。

この Induction Icing (誘導アイシング) は

Carburetor Icing (キャブレター・アイシング) とも

呼ばれていますが、

燃料誘導システム内の氷の蓄積で

ピストンエンジンに影響を与えるものなんです。

キャブレター・アイシングは主に

フロートタイプのキャブレターに起こる現象です。

下は、フロートタイプのキャブレターの

仕組みを表したものです。

燃料と空気は、

このキャブレターの仕組みにより

混合気となるんです。

矢印が空気の流れなんですが、

たくさんの空気が

エア・インレット (吸気口) から

入ってきます。

VENTURI と呼ばれる細くなった部分を

通過する際に空気の移動速度が

速くなるんですね。

スピードアップと同時に

気圧も一気に下がります。

すると、VENTURI 部と

FLOAT CHAMBER (燃料液面調整室) との間に

気圧差が生じることになりますね。

気圧の低いところに向かって燃料が

ノズルから吸い出されることで

空気と混ざる仕組みになっているんです。

※ VENTURI に関しては

Aerodynamics のカテゴリーで登場しています。

もし、記憶が曖昧になっていたら

さかのぼって読み直してみましょう。

Difference in the air pressure

between the venturi throat and the air inlet

Difference in the air pressure

:気圧差

between the venturi throat and the air inlet

:の間 ベンチュリの狭い部分と吸気口の空気

さて、このようによく考えられた仕組みの

キャブレターではあるのですが、

構造上どうしてもアイシングが起こってしまうので

理解しておきましょう。

エア・インレットから吸入された空気は

Venturi throat を通過する際に

圧力が下がることは前述の通りです。

この圧力の減少によって

かなりの温度の低下も引き起こされるんですね。

華氏で50°F (摂氏10°C) も下がるんです。

もし空気にたくさんの湿気が含まれていたなら

その水分が氷となってしまうわけなんですね。

仮に外気温が 華氏70°F (摂氏21.1°C) であっても

Venturi throat を通過すると

空気の温度は一気に下がりますから

湿気の高い空気ですと氷が形成されるのです。

CONDITIONS  FAVORABLE  TO  CARB  ICE

20°F to 70°F high humidity

CONDITIONS  FAVORABLE  TO  CARB  ICE

:条件 好都合の キャブレター・アイスするため

20°F to 70°F and high humidity

:華氏20度から華氏70度で高湿度

またまた日本では馴染みの薄い

単位が登場してきましたね。

航空界では華氏表記が標準なので

すこしずつ慣れていくようにしましょうね。

一応、摂氏・華氏の変換計算式を

書いておきますね。

°C×1.8+32=°F

(°F-32)÷1.8=°C

さて、氷結はまず、

Venturi throat の狭い部分から始まり

やがてスロットル・バルブにまで及んでいきます。

仮に

Fixed-Pitch Propeller の機体で飛行中

このような状態となったとき

コックピット内のあなたが得る兆候とは

どんなものなのかというと・・・

エンジンの RPM が下がるのです。

氷に邪魔されて

エンジンに送り込まれる燃料混合気の量が

減少するためなんですね。

これって、通常の場合の

スロットルを絞っている状態と

全く同じことになっているということなんです。

FIRST  INDICATION  OF  CARB  ICE

Loss of RPM

FIRST  INDICATION  OF  CARB  ICE

:最初の兆候 キャブ (キャブレターの略)・アイスの

Loss of RPM

:喪失 回転数の

では、キャブレター・アイスが

蓄積されてしまった場合は

どうしたらいいのしょうか?

キャブレター・ヒートを ON です。

正解です。

だったら予めアイシング対策として

常に ON にしておけばいいじゃない?

と思う人もいるかも知れませんね。

ここで、キャブレター・ヒートを ON にした際

起こる現象があるので覚えておきましょうね。

まず、キャブレター・アイスが原因で

エンジン RPM が下がります。

そこで、キャブレター・ヒートを ON にします。

すると、エンジン RPM はさらに少し下がります。

これは温かい空気がエンジン内に入ってくるためです。

温かい空気というのは膨張しています。

空気密度は低いということですね。

密度が低い空気が取り込められるということは

燃料と空気の混合気の割合は

リッチ (濃い) 状態になりますね。

このことによって

エンジン・パフォーマンスが下がり

RPM も下がることになるわけなんですね。

APPLYING  CARB  HEAT  CAUSES

Decreased engine performance

and a richer fuel/air mixture

APPLYING  CARB  HEAT  CAUSES

:キャブレター・ヒートの適用 原因となる

Decreased engine performance

:低下される エンジン・パフォーマンス

and a richer fuel/air mixture

:それと リッチ寄りの燃料と空気の混合気

その後、氷が融けるに従って

少しずつエンジン RPM が上昇してくるんです。

このようにエンジン・パフォーマンスに

影響を与えてしまうので

常にキャブレター・ヒートを

ON にすることはしないのです。

キャブレター・ヒートの仕組みは

下の図のようにエンジンの排気の熱を

利用しているんです。

以上がキャブレター・アイスが起こる原理と

対処法ということですね

プライベートパイロットの筆記テストでは

この辺までを押さえておけば大丈夫です。

<まとめ>

燃料と空気の混合気を作る機器を

キャブレターという

フロートタイプのキャブレターの仕組みは

吸気口から入った空気が

VENTURI 部を通過する際に気圧が下がる

そこに生じた気圧差を利用している

VENTURI 部の気圧の減少は

同時に温度の低下をもたらす

この温度の低下より氷結が起こる

アイシングが起こりやすい条件

華氏20度から華氏70度で高湿度

アイシングの兆候

(Fixed-Pitch Propeller 機の場合)

エンジン RPM の減少

キャブレター・ヒート ON にすると

(Fixed-Pitch Propeller 機の場合)

やはりエンジン RPM の減少

混合気リッチによる

エンジン・パフォーマンスの低下

氷が融けた後は

少しずつエンジン RPM は上昇

はい。ということで、

今回の練習問題にトライしてみましょう!

・・・・・・・・・・・・・・・

Q1  :  The operating principle of float-type carburetors is based on the

A  :  automatic metering of air at the venturi as the aircraft gains altitude.

B  :  difference in air pressure at the venturi throat and the air inlet.

C  :  increase in air velocity in the throat of a venturi causing an increase in air pressure.

The operating principle

:作動原理

of float-type carburetors

:フロートタイプ・キャブレターの

is based on the

:~に基づいている

automatic metering of air at the venturi

:自動計量 べェンチュリ部の

as the aircraft gains altitude

:~につれて 航空機 上昇する 高度

difference in air pressure

:気圧差

at the venturi throat and the air inlet

:ベンチュリの狭い部分と吸気口の空気

increase in air velocity

:空気速度の増加

in the throat of a venturi

:ベンチュリの狭い部分の

causing an increase in air pressure

:原因となる 気圧増加の

自力で答えを導き出してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q2  :  Which condition is most favorable to the development of carburetor icing ?

A  :  Any temperature below freezing and a relative humidity of less than 50 percent.

B  :  Temperature between 32 and 50°F and low humidity.

C  :  Temperature between 20 and 70°F and low humidity.

Which condition is most favorable

:一番好都合な条件はどれすか?

to the development of carburetor icing 

:キャブレター・アイスを発達させるのに

Temperature between 32 and 50°F and low humidity.

:気温華氏32度と華氏50度の間で低湿度

Temperature between 20 and 70°F and low humidity.

:気温華氏20度と華氏70度の間で高湿度

自力で答えを導き出してから

音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q3  :  The presence of carburetor ice in an aircraft equipped with a fixed-pitch propeller can be verified by applying carburetor heat and noting

A  :  an increase in RPM and then a gradual decrease in RPM.

B  :  a decrease in RPM and then a constant RPM indication.

C  :  a decrease in RPM and then a gradual increase in RPM.

The presence of carburetor ice

:キャブレター・アイスの存在は

in an aircraft equipped with a fixed-pitch propeller

:固定プロペラを装備した航空機での

can be verified

:確認できる

by applying carburetor heat and noting

:キャブレター・ヒートの適用と以下の現象を認めることによって

an increase in RPM and then a gradual decrease in RPM.

:RPMが増加したのち ゆるやかなRPMの現象

a decrease in RPM and then a constant RPM indication.

:RPMが現象したのち 一定のRPMの表示

a decrease in RPM and then a gradual increase in RPM.

:RPMが減少したのち ゆるやかなRPMの増加

自力で答えを導き出してから

音声を聞いてください。

はい。どうでしたか?

日本語では、しっかりと理解できていると思います。

あとは、それらの内容が英語では

どのように表現されるのかということに

慣れるだけです。

当時、私も英語には苦労しました。

問題集も何度も何度も繰り返していました。

くり返し取り組んでいく中で

知らない単語の集まりだったものが

少しずつですが、意味をもつ文章として

ぼんやりと見えてくるときがきます。

必ずそういう瞬間がやってきます。

一番の近道は毎日コツコツとやるだけなんです。

自分の手で飛行機を飛ばすためです。

頑張っていきましょう!

ということで、今回は以上となります。

今日も最後まで読んでいただいて

ありがとうございます!

ではまた!

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