Surface Observations (実況気象通報式) について

[Weather : 気象]

パイロット免許への水先案内人

須永です!

 

前回は、

Wind Shear and Mountain Waves (ウインドシアと山岳波) 

についてお話しさせていただきました。

風向・風速が突然変わる

ウインドシアは、どこでも発生する

可能性はあるということでしたね。

ただ起こりやすい場所を理解して

注意を払ったり、

特徴的な雲からその存在の有無を

予測できることも事実です。

もし危険なレンズ型雲を発見したなら

絶対に近づかないということですね。

 

 今回は、

 Surface Observations (定時飛行場実況気象通報式)

についてお話したいと思います。

これは、航空気象情報を英数字によって

通報するための書式なんです。

空港や航空気象台から定期的に発信されて

航空関係者が空港の気象状況を

把握するために使用されているものなんですね。

METARSPECI という

2つの書式があります。

METAR は、

定時の気象観測を通報するものです。

一方、SPECI は、

定時観測以外の臨時的な気象観測 (特別観測) を

行った際に通報されるものなんです。

では、見本のデータを見ながら

具体的な内容に触れていくことにしましょう。

上記は、5つの空港の METAR と SPECI です。

左端の METAR と SPECI の表記のすぐ隣に

それぞれ K から始まる

アルファベット3文字が見えますか?

これらは、ICAO の空港コードです。

頭に K が付いたものが

合衆国のアラスカ州とハワイ州を除く

48州にある空港コードと定められています。

ちなみにアラスカ州の空港には

PA,PF,PO,PP のいずれかが頭に付いていて

ハワイ州の空港は PH が付いています。

見本データの上から順に

KINK:Winkler County Airport (Texas)

KBOI:Boise Airport (Idaho)

KLAX:Los Angeles International Airport (California)

KMDW:Chicago Midway International Airport (Illinois)

KJFK:Jhon F. Kennedy International Airport (New York)

というように5つの空港についての

データということになります。

では早速、一番下の JFK 空港の

レポートから見てみましょう。

空港コードの KJFK のすぐ後ろにあるのが

日時のデータです。

初めの2桁がその月の日にちを表しています。

12ということは、12日という意味ですね。

次の 1853 は、時間です。

最後に Z が付いていますので

ズールタイムということです。

ですから、協定世界時 18:53 という意味です。

その通報が METAR なのか SPECI なのか?

どの空港のものか?

いつ(日時) 発信されたのか?

という順序です。

ここまでOKですか?

では、以降含まれる内容と記載順は

以下の通りになっていますよ。

温度/露点の単位は摂氏 (℃) です。

・風

・視程

・重要な天気(降水や視程障害)

・雲量

・温度/露点 (℃)

・高度計規正

・注意事項

ただし、毎回全ての内容が

含まれるとは限りません。

重要な天気に含まれる

降水などがない場合や

視程不良の原因となる霧のような

現象が生じていなければ

雨や霧という表示は必要なくなるわけですね。

WIND

VISBILITY

SIGNIFICANT WEATHER (Precipitation or obstructions to visibility)

CLOUD COVER

TEMP/DEWPOINT (℃)

ALTIMETER SETTING

REMARKS

WIND

:風

VISBILITY

:視程

SIGNIFICANT WEATHER (Precipitation or obstructions to visibility)

重要な天気(降水や視程障害)

CLOUD COVER

:雲量

TEMP/DEWPOINT

:温度/露点(℃)

ALTIMETER SETTING

:高度計規正

REMARKS

:注意事項

では、もう一度 JFK 空港に戻りましょう。

風の情報は、日時のグループの後ですね。

5桁の数字が見えますか?

頭の3桁が風向を表しています。

この場合は、180度の方向からの風ということですね。

つまり南風です。

この風向の180度は

True North (真北)に対してのものです。

Magnetic North (磁北)ではありませんよ。

下2桁の数字は、風速で

単位は、ノットです。

KT は、knot の略ですよ。

つまり、JFK 空港は、180度の方向から

4ノットの風が吹いているということです。

風は自然のものですから

常に一定の速度で吹いているわけではありません。

時には突風なんてこともありますね。

そこで Winkler 空港の欄を見てください。

110度の方向から12ノットの風が吹いていて

時折18ノットの突風が来てますという意味です。

Gは、Gusting の略です。

さて、私たちが METAR や SPECI を見た場合

一番注目すべき所はどこだと思いますか?

それは、その空港が VFR のコンディションなのか?

IFR のコンディションなのか?ということです。

VFR でその空港を離着陸するための

最低条件を覚えていますか?

通常は

少なくとも Visibility (視程)が 3 statute miles 以上かつ

少なくとも Ceiling (雲底高度)が1,000 feet 以上

です。

Ceiling の定義を押さえておきましょう。

空を見上げて青空が全く見えないように

完全に雲に覆われた状態を

Overcast といいます。

次に全体の5/8から7/8まで

雲に覆われた状態が Broken となります。

さらに雲量が半分以下であれば

Scattered というように分類されます。

この Broken 以上の雲量から

Ceiling と呼ばれるんですね。

複数の層が存在する場合は

一番低い層の雲底高度を Ceiling と

呼んでいます。

CEILING

Lowest layer of clouds or obscuring phenomenon that is either broken or overcast

CEILING

:シーリング(雲底高度)

Lowest layer of clouds

:一番低い層 雲の

or obscuring phenomenon that is either broken or overcast

:または 不明瞭な現象 ブロークンまたオーバーキャストのどちらか

例えば、下のような雲がある場合

Ceiling は何 feet ですか?と聞かれたら

もうあなたは答えられますよね。

500 feet に Scattered

800 feet に Broken

1,100 feet に Overcast

Ceiling は Broken 以上の雲量がある場合なので

500 feet は除外ですね。

1,100 feet か 800 feet の2択です。

定義として一番低い層のものを指すので

正解は、800 feet ということですね。

さあ、話を戻しますよ。

このようなデータを与えられたとき

これらの空港のうちどれが

VFR コンディションなのか?を問われても

答えられるようにならなければいけません。

チェックすべき個所は

Visibility と Cloud cover です。

一番上のWinkler 空港からチェックしていきましょう。

通常の VFR では飛行できない条件であっても

特例として

Visibility (視程)が 1 statute miles 以上

かつ Clear of cloud (雲に入らない)

夜間であれば、IFR仕様の機体と資格が必要

これらの条件をクリアできれば

Special VFR (特別有視界飛行方式)

VFR機が離着陸できることは

既に学びましたよね。

では、Winkler 空港の条件はというと

Visibility の 15SM の SM

(statute miles) の略ですから

15 statute miles ということです。

SKC は (Sky Clear) の略なので

問題なく VFR コンディションと判断できます。

次に Boise 空港を見てみましょう。

Visibility は、30 statute miles ですね。

STC は、Scattered の略です。

後ろの数字は高度を意味しています。

150という3桁ですが、 

00が省略されていますので

15,000 feet ということです。

Boise 空港もまた

VFR コンディションということですね。

では、Los Angeles 国際空港はどうでしょう?

Visibility は、6 statute miles です。

BR は、Baby Rain の略です。

これは霧雨のように傘が不要な程度の

弱い雨に当たります。

晴れている時と比べたら視程は良くないですが、

少なくとも Visibility (視程)が 3 statute miles

の条件はクリアしています。

雲は、Scattered の雲が 700 feet

もう一つ別の Scattered の雲が 25,000 feet

ここで 700 feet の Scattered があるのですが、

「少なくとも Ceiling (雲底高度)が1,000 feet」

という条件には引っかかりますか?

大丈夫ですよね。

なぜなら、

Ceiling は Broken 以上の雲量を

指すわけですからね。

ということで、

ここまでの3つの空港は

ともに VFR コンディションということです。

では、次に Chicago Midway 国際空港はどうでしょうか?

Visibility の  1 1/2SM とは、

One and a half (statute miles) という意味です。

つまり、1.5 SM です。

VFR の条件として

「少なくとも Visibility (視程)が 3 statute miles」

の条件が適合しないということになります。

この時点で、この空港の現在の天候は

IFR コンディションということが分かります。

RA は、Rain の略ですね。

それから、

OVC は、Overcast の略ですよ。

Overcast の Ceiling が 700 feet 

ということです。

ここで、もう一つの

「少なくとも Ceiling (雲底高度)が1,000 feet 以上」

という条件も満たせていないということなんですね。

では、最後に Jhon F. Kennedy 国際空港はどうでしょうか?

Visibility は、極めて悪いですね。

たったの a half (statute mile) しかありません。

0.5 SM です。

FG は、Fog の略です。

悪条件のため

更に情報がつけ加えられています。

R04/2200 これは、

滑走路上でパイロットが見通せる距離のことで

Runway Visual Range (RVR) といいます。

単位は、feet です。

つまり、

Runway 04 では、RVR が

2,200 feet であるということです。

これらの情報は、あくまでも IFR機に対するものです。

当然ですよね。

こんな条件下では、VFR機は飛べません。

次に雲はどうでしょう?

Overcast の Ceiling が 500 feet ということです。

Ceiling の数値には、00 をつけるん (×100)でしたね。

「少なくとも Ceiling (雲底高度)が1,000 feet 以上」を

満たせていません。

完璧に IFR コンディションということです。

では、Jhon F. Kennedy 国際空港の

最後のデータまで見ていきましょう。

次のグループは、

温度と露点ですね。

温度は、20℃ で

露点は、18℃ ということです。

ラストのグループは、

高度計規正の値です。

A は、Alutimeter の頭文字です。

3006 には、真ん中に小数点があるのです。

実際には記されませんが、

30.03 inches のことになりますよ。

OK! ここで、1つ前の空港に戻ってみましょう。

Chicago Midway 国際空港の

最後の項目を見てください。

ここは、Remark のセクションですよ。

RMK は、Remark の略です。

RAB35 の RA は、Rain の略でしたね。

そのすぐ後ろの B は、Began の略となります。

35は、定時から35分過ぎという意味です

つまり、雨が前の定時から35分過ぎから

雨が降り出したという注意事項なんですね。

このような情報を与えられ、もしも

「雨が降り出したのは何時ですか?Zタイムで答えなさい」

というトリッキーな出題があったとしたら

どう答えますか?

1935Z と 1835Z の2択だとしたら

どちらが正解になると思いますか?

1835Z が正解です。

理由は、

Chicago Midway 国際空港の

SPECI 発信時刻は、12日の

18:56 Zタイムです。

観測者は発信時には

前の定時から35分過ぎに

雨が降り出したことを知っています。

18:56 Zタイムよりも

早い時間に降り始めたわけですから

18:56 Z より前の時間でなければ

つじつまが合わなくなってします。

19:56 Z では未来の話になってしまうので

まだ迎えていない時間に雨が降り始めた

ということはあり得ないですよね。

はい。今回の話は以上です。

では、まとめていきましょう。

<まとめ>

Surface Observations (定時飛行場実況気象通報式)

◎2つの書式がある METARSPECI

METAR

◎定時航空実況気象通報式 (定時の気象観測を通報するもの)

SPECI

◎特別飛行場実況気象通報式 (定時観測以外の臨時的な気象観測 (特別観測) を

行った際に通報されるもの)

書式内容と順序

・METAR or SPECI

・空港コード

・日時

・風

・視程

・重要な天気(降水や視程障害)

・雲量

・温度/露点 (℃)

・高度計規正

・注意事項

CEILING

◎一番低い層の Broken か Overcast

Special VFR (特別有視界飛行方式) の条件

Visibility (視程)が 1statute miles 以上

かつ Clear of cloud (雲に入らない)

夜間であれば、IFR仕様の機体と資格が必要

合法的にはOKですが、IFR資格の無いパイロットにとっては間違いなく危険な条件ですので、自分の技量も考慮して余程の緊急性に迫られない限り、Special VFR で飛行することは控えた方が賢明だと思います。

今回の説明で登場しました

METAR / SPECI に使用される略語は、ほんの一部です。

さらに知識を増やしたい方は下のリンクを参考にしてください。

https://www.weather.gov/media/wrh/mesowest/metar_decode_key.pdf

では、練習問題にトライしてみましょう!

・・・・・・・・・・・・・・・

Q1  :  (Refer to figure) The wind direction and velocity at KJFK is from

A  :  180° true at 4 knots.

B  :  180° magnetic at 4 knots.

C  :  040° true at 18 knots.

(Refer to figure)

:図を参照してください

The wind direction and velocity at KJFK is from

:風向と風速は KJFKの ~です

180° true at 4 knots.

:真北に対して180度から 4ノットで

180° magnetic at 4 knots.

:磁北に対して180度から 4ノットで

040° true at 18 knots.

:真北に対して040度から 4ノットで

自力で回答してから音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q2  :  For aviation purposes, ceiling is defined as  the height above the Earth’s surface of the

A  :  lowest reported obscuration and the highest layer of clouds reported as overcast.

B  :  lowest broken or overcast layer or vertical visibility into an obscuration.

C  :  lowest layer of clouds reported as scattered, broken or thin.

For aviation purposes,

:航空目的のため

ceiling is defined as  the height

:雲底高度 定められている 高さとして

above the Earth’s surface of the

:地上 ~の

lowest reported obscuration and

:一番低い 報告された 視程障害と

the highest layer of clouds reported as overcast.

:一番高い層の雲 オーバーキャストのような

lowest broken or overcast layer or vertical visibility into an obscuration.

:一番低いブロークンかオーバーキャスト または縦方向の視程障害

lowest layer of clouds reported as scattered, broken or thin.

:報告された一番低い層の雲 スキャタード、ブロークンまたは薄い雲のような

自力で回答してから音声を聞いてください。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q3  :  (Refer to figure) What are the current conditions depicted for Chicago Midway Airport (KMDW)?

A  :  Sky 700 feet overcast, visibility 1-1/2SM, rain.

B  :  Sky 7,000 feet overcast, visibility 1-1/2SM, heavy rain.

C  :  Sky 700 feet overcast, visibility 11, occasionally 2SM, with rain.

(Refer to figure)

:図を参照してください

What are the current conditions depicted

:何ですか 現在のコンディション 記された

for Chicago Midway Airport (KMDW)?

:シカゴ・ミッドウェー空港の

Sky 700 feet overcast, visibility 1-1/2SM, rain.

:上空700フィートにオーバーキャスト、視程1.5SM、雨

Sky 7,000 feet overcast, visibility 1-1/2SM, heavy rain.

:上空7,000フィートにオーバーキャスト、視程1.5SM、激しい雨

Sky 700 feet overcast, visibility 11, occasionally 2SM, with rain.

:上空700フィートにオーバーキャスト、視程11、時折2SM、雨

自力で回答してから音声を聞いてください。

はい。どうでしたか?

今回は、本文中の説明が少々長くなりましたが、

ほぼ読み方の説明でしたので、

新しい語句を覚えることも少なかったと思います。

読み方さえ分かってしまえば

METAR や SPECI に関する筆記テストは

何も怖いことはありませんからね。

引き続き頑張っていきましょう。

ということで、今回は以上となります。

今日も最後まで読んでいただいて

ありがとうございます!

ではまた!

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