不具合を伴う飛行について

[FAR : 連邦航空規則]

パイロット免許への水先案内人

須永です!

 

前回は、

Transponder Requirements and Inspections

(トランスポンダーの必要空域と検査)

についてお話しさせていただきました。

トランスポンダーも

飛行には重要な機器ですので

定期的な検査が必要であることは

もちろんですが、

高度情報の送信可能な

トランスポンダーを必要とする

空域についても

しっかりと整理して

覚えていただけましたか?

回は、

Flying with Inoperative Equipment

(不具合を伴う飛行)

についてお話したいと思います。

ちょっとイメージしてください。

あなたは出発を間近に控えていて

プリフライトチェックの際、

作動しない機器の不具合を発見しました。

不具合を抱えたままでも

条件つき等で規則の範囲内で

飛行することは可能なのかについて

掘り下げてみることにしましょう。

基本的に規則として求められるのは、

これから出発しようとしている航空機は

すべての機材機器等が

適切に作動していなければ

飛行することはできません。

離陸前には全ての計器や装備品が

正常に働いていることが必要なんですね。

しかし、FAAは以下の2つ方法で

不具合を伴ったままでの飛行を

許しています。

INOPERATIVE EQUIPMENT

(動作しない機器)

1つは

FAR 91.213(d)

もう一つは

MINIMUM EQUIPMENT LIST (MEL)

です。

まずはじめに

FAR 91.213(d) について

少しお話ししますね。

この FAR 91.213(d) は

主にセスナ172のような

小型機に対しての連邦航空規則です。

FAR 91.213 は

不作動の計器と装備」についての

セクションなのですが、

この (d) に規定されている場合を除き

以下の条件が満たされていない限り

作動不能な機器または機器を

備えた航空機を離陸させてはいけない。

と謳われています。

つまり、

原則として全て正常な状態でなければ

飛行はできないとしているのですが、

(d) に準じていれば特例として

飛行が許されるということです。

この (d) というのが、

(特定の航空機に対して

発行され認可された最小機器リストを

使用することを許可された者は、

セクションの要件を満たすために

最低機器リストを

使用しなければならない。)

に従って動作しない機器を取り外し、

当該箇所で動作する機器は

承認された最小機器リストなしで、……

と自分で書いていても

頭が痛くなってしまうような

条文が続きますので終わりにしましょう。

本当に条文て分かりにくい表現ですよね。

FAR 91.213 のリンクを

貼っておきますので

時間のあるときにご

自身で確認してみてください。

PC で開くと自動翻訳されて

便利ではあるのですが、

Inoperative (作動しない) を

 (術中) というような

変な訳になっていますので

余計に分かりにくいと思いますが

トライしてみてください。

https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=35416fd16fa14c84e02bb528015848d0&mc=true&node=se14.2.91_1213&rgn=div8

ちょっと話が逸れましたが、

簡単にいうと

特例があるということですね。

もし、プリフライトチェックで

不具合を見した場合、

あなたには

3つの選択肢があります。

1・フライトをキャンセルする

2・修理してもらう

3・一時的に整備を延期して飛行する

INOPERATIVE EQUIPMENT

Cancel the flight

Get it fixed

Defer maintenance

INOPERATIVE EQUIPMENT

:動作しない機器

Cancel the flight

:飛行をキャンセル

Get it fixed

:修理してもらう

Defer maintenance

:修理を延期する(そのまま飛ぶ)

では、

一時的に整備を延期して

飛行しても良い特例について

見ていくことにしましょう。

今回、あなたが

プリフライトチェックで発見した不具合は

2つある VHF 無線機のうち

1つが動作しなかったとしますよ。

使用可能な VHF COM が

1つだけだとしても

修理を先延ばしにして

飛ぶことが許されるのでしょうか?

FAR 91.213(d)によると

以下に挙げたもので

判断することが必要とされています。

・航空機のタイプ、仕様/設計

又は

・連邦航空規則

又は

・耐空性改善通報

判断材料として

これらのカテゴリーから必要なものを

ピックアップするわけです。

REQUIRED BY –

Type Design

FARs

Airworthiness Directive

REQUIRED BY –

:(・・・で判断を)必要とされる

Type Design

航空機のタイプ、仕様/設計

FARs

連邦航空規則

Airworthiness Directive

耐空性改善通報

これら3つ全てを

フォローする必要はありません。

3つのうちの1つで大丈夫です。

まず最初にトライして欲しいのは、

Type Design です。

各航空機メーカーは

ガイダンスを提供しています。

それによって詳細を

確認することが出来ますよ。

航空機の型式ごとに

フライトマニュアルというのが

あるんですね。

実際の飛行訓練に入ったら

目にする機会も多いと思います。

当然知っておかなくてはいけない内容も

多く記載されています。

チェックライドでは

口頭テストでその中身についての

質問もありますから、

相当お世話になるはずです。

そのフライトマニュアルの中には

KINDS OF OPERATIONS EQUIPMENT LIST

(稼働装備リストの種類)

と呼ばれるものが記載されています。

このリストはフライトにおいて

稼働していなければならない

装備機器の詳細を

確認することができるのです。

では、

今回あなたが発見したケースということで

VHF COMの欄を見ると

日中 (DAY) のVFRフライトも

夜間 (NIGHT) のVFRフライトも

0 の表記になっています。

これは VHF COM は

無くても良いということを

意味しています。

意外というかビックリなんですが、

この機体における VFR 飛行では

VHF COM は必要ないということです。

では、IFRフライトではどうでしょう?

日中も夜間も

1と表記されていますね。

IFR では

最低でも1つの VHF COM がないと

規則的にダメだということです。

ま、これは当たり前ですよね。

常に管制官とコミュニケーションを

取りながら飛行するのがIFRですし、

VHF COM がなければ

指示も受け取れませんからね。

そこでもう一度

あなたのケースを考えてみると、

2つの VHF COM のうち

1つがアウトでしたね。

1つは使用可能ですので、

気象条件にかかわらず

修理を延期して飛行できる

ということです。

では、もしも、

フライトマニュアルに

稼働装備リストの種類が

記載されていない場合

どうするのかというと、

基本的に必要とされる装備ということで

連邦航空規則の

FAR 91.205

チェックすることになります。

https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=35416fd16fa14c84e02bb528015848d0&mc=true&node=se14.2.91_1205&rgn=div8

日中の VFR飛行ですか?

夜間の VFR飛行ですか?

日中の IFR飛行ですか?

夜間の IFR飛行ですか?

どんなタイプのフライトを

あなたは予定していますか?

それによってどんな装備が

必要とされているのかが決定するので、

まずあなたの予定している飛行を

はっきりさせることです。

その飛行に対しての規則で定められた

全ての装備が正常に動作しなくては

飛行はできませんからね。

例えば、

マグネティックコンパスが

振れていないとします。

FAR 91.205(b)では、

マグネティックコンパスは

VFRフライトでは必要とされています。

ですので、

この場合は修理を延期することは

許されません。

MAGNETIC COMPASS

Required for VFR

MAGNETIC COMPASS

:マグネティック コンパス

Required for VFR

:VFR飛行で必要とされる

では、

最後のチェックカテゴリーとして

AD(耐空性改善通報)ですが、

発見された不具合箇所が

ADに引っかかっている場合は、

ADのウェブサイトから

確認をしてみてください。

https://www.faa.gov/aircraft/air_cert/continued_operation/ad/

ただウェブ上で判断することが

出来なかったとしましょう。

仮にこの時点で判断できないとしても、

まだ方法は残っていますよ。

なぜなら、FAAは

色々な角度からバックアップされるように

規則を定めているからです。

そこで、

もう一度 FAR 91.213(d) の登場です。

これによると

不具合の装備機器のスイッチを切り

動作を停止するか装備機器を取り外して、

スイッチや装備箇所の近くに

使用不能の掲示をするとあります。

FAR 91.213(d)

Deactivate or remove equipment

Placard the switch or item

FAR 91.213(d)

:連邦航空規則パート91.213(d)

Deactivate or remove equipment

:スイッチを切るか 機器を取り外す

Placard the switch or item

:(不作動の旨を)掲示する スイッチか機器に

さて、

電子装置についての

Deactivate

可能であれば、電源から切り離し取り外す」

ことを意味しています。

これらの作業は

航空電子工学の専門家や

航空機電源装置の整備士によることが

求められます。

もしくは、

単純にサーキットブレーカーを

引っ張ることで

動作を停止させるだけであれば

パイロットのあなたが

行なっても大丈夫です。

装置の取り外しだけは

常に専門家が必要ということですね。

さて、

装置の取り外しが施された場合は

重量バランスが変わりますので、

その記録も変更されることになりますよ。

あなたはパイロットとして

重量バランスが変更されたことを

整備記録で確認できるということです。

今回あなたが発見した仮想のケースでは、

不具合の VHF COM を1つ取り外し、

サーキットブレーカーを引き、

該当箇所の近くに

使用不能のプラカードを

掲示するということが

求められるわけです。

では、

不具合を伴った飛行が許される

もう一つの方法である

MINIMUM EQUIPMENT LIST (MEL)

(最小装備リスト)

についての話に移りますね。

この最小装備リストMELは、

そのほとんどが

タービンジェット機用として

発行されるものです。

稀にピストンの双発機に

発行されることもあるようですがね。

ビジネスジェットのように

ユーザーの好みや使い勝手に合わせて

機能や仕様を変更した場合、

その機体独自の必要装置も

千差万別で変わってくることになります。

そこで、ユーザーは

カスタマイズされた機体についての

必要装備リストの使用の許可を

取らなければいけません。

このリクエストは文書で

Flight Standards District Office

(フライトスタンダード地区事務所)

に申請します。

FAAに認められた場合は、

文書による承認書を

飛行する際は常に

機体に常備しなければなりません。

この MEL は

ユーザーの機体だけを考慮して

補足的な証明書として発行されますので、

機体の登録ナンバーと

製造シリアルナンバーも

明記されています。

MEL の中身の詳細については

ザックリ言ってフライトマニュアルの

KINDS OF OPERATIONS EQUIPMENT LIST

(稼働装備リストの種類)

のような感じですし、

そのほとんどが

ビジネスジェット用ということで

割愛させて頂きますね。

MEL とは、どんなものというのを

知っていれば筆記テストは大丈夫です。

まあ、条文の説明ということで

少し長くなってしまいましたが、

今回の内容は

筆記テスト対策というよりは、

口頭テストでの

正答率が低い規則ということで

取り上げさせて頂きました。

ですので、チェックライドの前に

今回の内容である

「不具合を伴っての飛行」について

インストラクターと口頭テスト対策で

準備しておくといいかも知れませんね。

<まとめ>

Flying with Inoperative Equipment

(不具合を伴う飛行)

飛行前点検で作動しない機器を発見

選択肢は3つ

1・フライトをキャンセルする

2・修理してもらう

3・一時的に整備を延期して飛行する

一時的に整備を延期して飛行するには

2つの方法に準じ飛行可能

① FAR 91.213(d)

② MINIMUM EQUIPMENT LIST (MEL)

FAR 91.213(d)

以下で判断

① 航空機のタイプ、仕様/設計

 フライトマニュアルの

 KINDS OF OPERATIONS EQUIPMENT LIST

 を参照

② 連邦航空規則

 FAR 91.205

 基本的に必要とされる装備をチェック

③ 耐空性改善通報

 ADで判断できない場合は

 FAR 91.213(d) に基づき機器を取り外し、

 スイッチや当該箇所に動作不能の掲示

MINIMUM EQUIPMENT LIST (MEL)

カスタマイズされた機体の最小装備リスト

◎使用するには FAA の認可が必要

◎文書による申請と文書による認証が必要

長い説明になり

お疲れさまでした。

途中でも触れましたが、

今回の内容は筆記テスト対策というより

口頭テスト用の内容でしたので

練習問題は1つだけとなります。

・・・・・・・・・・・・・・・

Q  :  To use a MEL a pilot

A  :  may download it from the manufacturer’s website.

B  :  must receive written approval from the FAA.

C  :  may refer to it in the AFM, no further action is needed.

To use a MEL a pilot

:MELを使うため パイロットは

may download it from the manufacturer’s website.

:それをダウンロードしても良い 製造会社のウェブサイトから

must receive written approval from the FAA.

:受けなければならない 文書の認証を 連邦航空局から

may refer to it in the AFM, no further action is needed.

:参照しても良い 航空機フライトマニュアルの中のそれを、それ以上の行動は必要ない

自力で回答してから音声を聞いてください。

はい。どうでしたか?

出来るだけ噛み砕いて

説明したつもりなんですが

法規の表現は難しいですよね。

私自身も勉強をやり直しながらの

投稿となっているのですが、

早くこの FAR のカテゴリーを

抜け出したいと思いつつ

書いています。

誰もが敬遠したい分野ですが

飛ぶためには避けて通れませんので

頑張っていきましょう。

ということで、今回は以上となります。

今日も最後まで読んでいただいて

ありがとうございます!

ではまた!

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